シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


玲様は美しく微笑んだ。


「薬はあるよ? 簡単さ。"彼氏サン"から愛情をたっぷり貰えばいいんだ。身も心も"彼氏サン"に委ねれば、良くなるからね。まあ慢性病だから時間はかかるけれど、これ以上の効果的な治療方法はない。

だから僕、慌ててないだろ? 大丈夫、僕が君を治してあげるから。

ふふふ、これは多くの女の子達が通る道。だから何も怖いことはないよ? 安心して僕に任せて?」


若干…妖しく思える笑みで、言葉がやけに誘惑じみて感じるのは、言葉に"含んだもの"があるからだろう。


"清く正しく美しく"


大義名分で、その閉塞状況を突破されるつもりなのか。

今は櫂様も煌もいないから、玲様は留まりを見せることはない。

本気か、冗談か…玲様の微笑みの影にあるものを、推し量れない。


「ね、"彼女サン"?」


その言葉に、芹霞さんの顔が沸騰した。


「か、"彼氏サン"…」

「何だい、"彼女サン"…?」


真っ赤な芹霞さんの背景に、ピンク色のお花畑が見える。


「か、かかかか"彼氏サン"…」

「ん……?」


その単語を呟く度に真っ赤になる芹霞さんと、それを見る度に顔を弛ます玲様。

気のせいだろうか…

初々しさはあるものの、芹霞さんは…呟く単語に照れて、返事をする玲様の存在をスルーしているような気がするのは。

だけど玲様は嬉しそうで。


………。


まあ…玲様が元気になられるのなら、別にどうでもいい話。

玲様はいつものように余裕たっぷりな優位性を勝ち取り、"ぼすぼす"の鬱屈状況を打破された。

玲様自らがしでかした痕を、利用して。


さすがは警護団の司令塔。

転んでもただでは起きない。


お見事。



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