シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
流入 櫂Side
櫂Side
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裏世界の要となる硝子の塔に向かって、圧縮するように移動を続けるスクリーン。
塔が狙われたのは、その中にいる――擬似電脳世界を利用とした玲の父親や緑皇が、裏世界の防御面を一身に担っていたからなのか、それともその地下にあるという魔方陣に関係するものなのか。
五皇の盟約と黄の印という消えぬ縛りを与えながら、目的のための"殉死"を義務付けた、皇城家現当主、皇城雄黄――もとい、死んだはずの黄皇は、生前に施していた魔方陣によって、蘇生したらしい。
そのひとつが久遠の命を司る"約束の地(カナン)"の魔方陣でもある。
五皇を道具のように使い出した雄黄に対し、筆頭で反意を示した緋狭さんや、まだなにかありそうな緑皇ら、今の黄皇のあり方を絶対視しない五皇らの運命を変えるためには、黄皇を倒さねばならない可能性が出てきた。
つまり、雄黄を生かす魔方陣を、同時破壊する必要があると。
黄の力で縛られて五皇はそれができず、代わって託されているらしい俺達が、仮に魔方陣を同時破壊できたとして。
問題はふたつ。
ひとつは、久遠の命がどうなるかわからないこと。
ふたつは、魔方陣がこの世界にあるという事実で、裏世界の住人たちの生死が微妙になった以上、表世界に連れて生かせることを約束したものの、魔方陣破壊が彼らにどう影響を及ぼすかわからなくなってしまうこと。最悪、全滅させることになる。
だからこそ、取り急ぎこの世界の魔方陣を守るためにも、周涅が放ったこの攻撃を凌ぐことが必要になった。
ただ気になるのは、周涅が電脳世界をスクリーンで繋いだ"九星の陣"でこの世界を滅ぼそうとしているのなら、魔方陣消滅も意味していないだろうか。
それはすなわち、彼が崇める皇城雄黄の消滅になるのではないか。
その疑念はあるが、事態は一刻の猶予もない。
周涅がこの世界を滅ぼして、魔方陣をどうしようとしているのかはわからないけれど、とにかく周涅の術を破る必要があった。
幸い俺達には、陰陽道に詳しい翠の式神、護法童子がいて、術を破る方法を知っていた。
螺旋状の迷宮に見えるこの中には、9つの石碑がありそれを正しい順序で進めばいいという。
しかしそれには条件があり、その道程を残しておかねばならない。
煌の提案により、無尽蔵に出現するレイの鉄の胡桃を利用して、最後に電撃を放つというやり方を実行に移すためには、その最後まで9つの石碑をスクリーンから守るために、攻撃を凌げる人間が担当としてついていなければならなくなった。
要になるレイを外して、俺、煌、翠、護法童子…そして酸化の異能力を持つ睦月を入れても足りない4人分を、翠が式神を生み出して補充するということになった。
時間はかかるらしいから、翠を石碑担当にするのは最後にして、煌がスクリーンの攻撃から翠をより守ろうと、彼を肩車をして高い位置に押し上げると、
「うわあ、日照権が侵害された。だけど僕は優しいから穏便な和解ですませてやるよ。だから慰謝料と、…あ、賃貸料の胡桃、よろしく。ほら僕の巣にそこ、触れてるだろ?」
レイは悪徳不動産さながらに胡桃を要求した。
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裏世界の要となる硝子の塔に向かって、圧縮するように移動を続けるスクリーン。
塔が狙われたのは、その中にいる――擬似電脳世界を利用とした玲の父親や緑皇が、裏世界の防御面を一身に担っていたからなのか、それともその地下にあるという魔方陣に関係するものなのか。
五皇の盟約と黄の印という消えぬ縛りを与えながら、目的のための"殉死"を義務付けた、皇城家現当主、皇城雄黄――もとい、死んだはずの黄皇は、生前に施していた魔方陣によって、蘇生したらしい。
そのひとつが久遠の命を司る"約束の地(カナン)"の魔方陣でもある。
五皇を道具のように使い出した雄黄に対し、筆頭で反意を示した緋狭さんや、まだなにかありそうな緑皇ら、今の黄皇のあり方を絶対視しない五皇らの運命を変えるためには、黄皇を倒さねばならない可能性が出てきた。
つまり、雄黄を生かす魔方陣を、同時破壊する必要があると。
黄の力で縛られて五皇はそれができず、代わって託されているらしい俺達が、仮に魔方陣を同時破壊できたとして。
問題はふたつ。
ひとつは、久遠の命がどうなるかわからないこと。
ふたつは、魔方陣がこの世界にあるという事実で、裏世界の住人たちの生死が微妙になった以上、表世界に連れて生かせることを約束したものの、魔方陣破壊が彼らにどう影響を及ぼすかわからなくなってしまうこと。最悪、全滅させることになる。
だからこそ、取り急ぎこの世界の魔方陣を守るためにも、周涅が放ったこの攻撃を凌ぐことが必要になった。
ただ気になるのは、周涅が電脳世界をスクリーンで繋いだ"九星の陣"でこの世界を滅ぼそうとしているのなら、魔方陣消滅も意味していないだろうか。
それはすなわち、彼が崇める皇城雄黄の消滅になるのではないか。
その疑念はあるが、事態は一刻の猶予もない。
周涅がこの世界を滅ぼして、魔方陣をどうしようとしているのかはわからないけれど、とにかく周涅の術を破る必要があった。
幸い俺達には、陰陽道に詳しい翠の式神、護法童子がいて、術を破る方法を知っていた。
螺旋状の迷宮に見えるこの中には、9つの石碑がありそれを正しい順序で進めばいいという。
しかしそれには条件があり、その道程を残しておかねばならない。
煌の提案により、無尽蔵に出現するレイの鉄の胡桃を利用して、最後に電撃を放つというやり方を実行に移すためには、その最後まで9つの石碑をスクリーンから守るために、攻撃を凌げる人間が担当としてついていなければならなくなった。
要になるレイを外して、俺、煌、翠、護法童子…そして酸化の異能力を持つ睦月を入れても足りない4人分を、翠が式神を生み出して補充するということになった。
時間はかかるらしいから、翠を石碑担当にするのは最後にして、煌がスクリーンの攻撃から翠をより守ろうと、彼を肩車をして高い位置に押し上げると、
「うわあ、日照権が侵害された。だけど僕は優しいから穏便な和解ですませてやるよ。だから慰謝料と、…あ、賃貸料の胡桃、よろしく。ほら僕の巣にそこ、触れてるだろ?」
レイは悪徳不動産さながらに胡桃を要求した。