シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
それは俺も同感だった。
周涅が対抗策を見越していないとは思えないからだ。
それにスクリーンに、さっきまでの攻撃性がないのは……誘っているように思えるんだ。
それでも前に進まねばならない、それしか取る術がないのなら。
「櫂殿、あれが「一」の石碑ですぞ!!」
比較的簡単に行き着いた、起点となるべき石碑。
俺の身長ほどの大きな石碑は濃灰色のものだったが、白色で「壱」と刻み込まれていた。
白いのは、一白水星を担当する石碑だからのような気がする。
「じゃあここは私が担当させてもらうよ。あんた達も頑張っておいで」
爽やかに笑う睦月。
なんだろう、急に不安にこみ上げてくるのは。
「なんていう顔すんのさ、縁起でもない。あんたもさ、そこのデカいの!! だからそんな顔するんじゃないよ。また会おうね」
「櫂殿、こちらの方角ですぞ!!」
護法童子に次を促され、得体のしれない不安をこらえた俺達が、再会を誓って笑いあい、睦月に背を向けて走り始めた時だった。
背後から、異質な力を感じたのは。
それは睦月の力なのだろう。
それがこんなに早く感じるということは――。
「スクリーンが、攻撃を始めてきたか。瘴気の増長もまた急」
「櫂、こっちもそうだぜ。ウェルカム…って感じだよな」
煌が偃月刀を顕現していた。
「消滅させても現れるのだから、こちらの攻撃は最低限でいい。走るぞ!!」
バスターソードを顕現する俺も、巨大な偃月刀を振り回す煌も、既に武器は"消滅"させられる有効な手段ではないことは思い知っている。有効なのは銃だけ。だからこそ、自分が切り抜けるための銃は、使うわけはいかない。
多分煌も感じているはずだ。
この先、必ず使うことになるだろうこと。
ならば今は使えない。
「早く終わらせるから、ふんばれよ、牛女ッッ!!!」
「私のことは大丈夫だから、早く行ってよ、アンポンタンッッ!!」
「ちっ…。アンポンタンってなんだよ…悪態つきやがって。櫂、あいつはひとまずは大丈夫だ、けどこの先の保証はねえ。急ぐぞ」
俺は深く頷いた。
早く。
とにかくスクリーンに攻撃させる前に早く。
スクリーンが行く手を阻む前に駆け抜けろ。
邪魔なものは、敵より早く確実に切り裂いて、僅かな停滞が生じた間に、ひたすら走れ。