シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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スクリーンで作られる"九星の陣"が、全体像的にどれほどの規模があるのかわからない。

この世界の広さもまだ把握はしていないが、その隅々にまで及んでいるのか、一部分なのか。

周涅の陣を破る起点となる――「壱」の石碑に睦月を配置し、外に回り込むするような道のりで、次の地点に向かって駆けているが、中々「二」の石碑が出てこない。術が広範囲すぎるのか、精神的にそう感じるだけなのか。

だが俺達の速度は衰えることはなかった。俺達の行動を阻もうと忙しく動き出したスクリーンから、放たれる青いレーザー光は縦横無尽。それが体に届くまでの僅かな時間に一気に駆け抜ける俺達の足は止まることなく、まるで踊っているかのようだ。


不謹慎だと思うけれど――

風を感じて動くのが気持ちがいい。


体は、攻撃を避けようという意思伝達なくとも、勝手に動いている。体がもうすべきことを悟っている。

逼迫した状況なのに、体は軽やかで。

無心で体が動くのは、今となれば早いリズムに体を慣らしてきたことが、功を奏している気がする。緑皇に感謝すべきどうかは微妙だが。

爽快感を感じているのは俺だけではないのだろう。煌の顔も気持ちよさそうだ。まるで外で走り回る大型犬……と言ったら、多分怒られるだろうけれど、実に伸び伸びとした本能的な歓喜を感じとれる。

それを見てると俺まで嬉しくなって、どこまでも笑いあって走っていたい気になってくる。

なにがあっても、切り抜けられそうな気がしてくる。

なんでもできそうな、ぞくぞくとした興奮がわきおこる。


俺は、友に恵まれた。


煌の頭にはレイが仁王立ちのようにして立ち、鉄の胡桃を勇ましく道に落としていく。

俺の小指ほどしかない小さな両手で軽く投げているのに、地面に落ちた胡桃は地面に深くめりこんでいる。


どれほどの重みがある胡桃なんだろう。

それはどこから出て来るんだろう。


今さらながら、俺の従兄らしいこの小さなリスは、謎だらけ。


なにも考えずに適当に鉄の胡桃を落としているようにも見えるのに、


「ここに落とすと、あっちからの経路で来た時困るな。よし、ここが正解」


頭の中ではマップが組み立てられ、きちんと考えているらしい。


そしてようやく――。


「見えましたぞ、櫂殿!! あれが……「二」の石碑!!」


見えてくる、「弐」の文字が黒で刻まれている石碑が。


「だったらここは俺が。煌は翠が式神を生み出すまで、傍で……」


俺が残留を口にした時だった。


「我の声を聞き届け、我の命に従いたまえ!!」



今まで白目を剥いて黙したままだった翠が、突然煌の肩の上で立ち上がり、叫んだのは。


「うわわわ、なんだよ!!」


同時に声を上げたのは煌とレイ。

だが翠は手印を結んで、術を続行させる。



「――いでよ、式神!! 急急如律令!!」


ぶらりと翠の気が拡張し、俺は直感した。


ああ、来る!!


新たなる式神が!!


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