シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ほら起きろ、小猿!!! 遠坂!!!」
俺の両肩に、涎を垂らして熟睡していた奴ら。
――葉山~、次は観覧車乗ろうよ。こ、恋人同士みたいに…。
小猿は発情真っ盛り。
――むふふふふ。そこは誘い受けだろうよ、師匠。
遠坂は何の夢を見ているのか判らねえが、むふふふふと続く笑い方から、常人では理解しがたい…腐りきった邪(よこし)ま過ぎる夢を見ているのだろう。
「おら、起きろッッッ!!!」
バシバシと手でそれぞれの背中を叩いたら、1人と1匹は驚いて飛び起きた。
「此処で葉山とちゅ…ちゅ…ええええ!!!?」
「行け行け、くお…くお…えええええ!!!!?」
突き刺さる…2組の視線。
「……何だよ?」
かなり…未練の残る夢だったらしい。
「「………」」
「だから何よ?」
すると、1人と1匹は泣きそうな顔をして、
「折角頂上で葉山とちゅう出来たのに…」
「折角"あの域"到達者同士の絡みなのに…」
ぶつぶつと…まるで呪い言葉のような恨みがましい言葉を投げやがった。
もう何なんだよ、こいつら!!!
「…お前達、此処まで運んできてやった俺の肩を、おかしな夢で涎でべったべったにして、何だよそれは!!! 夢は夢だ!!! がっくりと肩落とすなッッ!!! 俺がいじめっ子みたいじゃねえか…おい、そんな絶望的な顔のまま達観したように笑うな、気味悪いじゃねえかよッッッ!!!」
「いやもう…ご愁傷様以外の言葉はありまへんな~」
アホハットは軽快な口調で、両手を合わせて頭を下げた。
まるで疲れというものを知らないかのような元気さを見せ続けてきた…この自称情報屋は、やはりただもんではないんだろう。