シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「式神が…そんな人間臭くていいのかよ。しかもなんで限定、三時間!? もう俺…突っ込むのが疲れてきた。ああ、癒しはいらねえよ、ぞえぞえサクラ。俺より小猿のトコ行け。しかしよ、セリカは偃月刀振り回してた怪力だけど、このタマキは素手で置いておいて大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ。タマキは凄い……はずだから」
なんとも微妙な答えだったけれど。
そして俺達は石碑に背を向け、吉祥に続いて走り出す。
直後背後で爆発音が響いて振り返れば、タマキを中心にして火の龍が螺旋状に立上り、スクリーンを燃やしている。
圧巻。
「すげえ…緋狭姉並かよ…」
「翠…お前あんなに力使わせて、使役の方は大丈夫か?」
「うん……。また吉祥ちゃんに癒して貰ったし。今回の…外観はへったくそだけど、今まで以上の力はあると思うんだ」
吉祥の力により、幾分元気を取り戻した翠が笑う。
外観なんてどうでもいい。式神としての力は確実に大きいものが作れていると思う。
だが…この一抹の不安はなんだろう。
その正体がわからぬまま、俺達は走った。
「ほほほ。ここが「四」ぞえ?」
吉祥が指さす石碑に刻まれているのは、緑色の「四」。
4番目の石碑は、3番目の石碑と隣り合わせの配置だから、すぐ行き着くことが出来た。
四 九 二
三 五 七
八 一 六
そう考えて見れば、「七」から「八」へ行くまで、短距離が多いのかもしれない。
だとすればもう吉祥の案内に頼らずとも、俺達やレイの記憶力だけで進んでいける。
そう思い、「四」をナナセ、「五」を吉祥、「六」を翠、「七」を俺、「八」をセリカ、「九」を煌とレイにすることにした。
真ん中の「五」に吉祥を置いたのは、吉祥の弾く力の恩恵を少しでも他外周の者達に与える為だ。
レイは最後まで自分とセリカを「九」担当にして欲しいと訴えていたが、
「俺が途中で違う石碑の担当になったら、チビのお前が、セリカを守り、このスクリーンを避けながら地面を走り、鉄の胡桃を撒いて、さらには最後の仕上げの電撃をするために、その間セリカを敵の包囲に放り込むことになるんだぞ!? セリカは優しいメスだろう!? お前を守るために命張って死んじまったらどうすんだ!? 惚れたメスを守るために、最善を考え迅速に仕事を終わらすのが、オスってもんだろう!! ならば全てをさっさと終わらせて、惚れたメスを迎えに行け!!」
うぐっとレイは小さな口を噛みしめ、ぶるぶると震え出す。
煌の言っていることは間違いはないのだが、最善と言いながら、そのためにセリカをひとり石碑担当にさせる危険性はまるで触れていない。
レイはそれに気づく様子もなく。
「セリカ……。オスは辛いよね…。僕は必ずやり遂げるからね、だから僕を信じて待っていてね」
こくんとセリカは頷く。へのへのもへじ顔で。
苦しみに耐えながら、無理矢理笑顔を見せるレイに、なぜか…目が潤んできてしまった俺は、鼻を啜る煌と翠と目があい、気まずくなって目をそらして、慌てて目を擦った。