シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
そしてすぐ行き着く「六」の石碑。
ここは翠を担当にさせた。
「早くこのチビに電撃をさせるから、ふんばれ」
「うん!! 吉祥ちゃんのお守りもあるし、俺……符呪での力をここで試して練習してみたい。今なら俺、出来ると思うんだ」
「ああ、頑張れ。俺はその隣に居るからな。共に頑張ろう」
そう俺は翠の頭を撫でると、翠に背を向けた。
途端に翠の声がする。
「うわわわ、なんだこれ!? 水の符呪!!」
地面を穿って下から上へと、うねった水が何本も現われた。
「我は命ずる。水よ…敵を蹴散らせ!!」
その爆発的な力の大きさに、俺は笑って心配そうに見ている煌に言った。
「大丈夫。翠は自信と同時に力をつけている。そんなすぐ潰れるようなヤワな奴じゃない」
「……そうだな」
そして次の石碑の前で、俺は煌と別れた。
「さあ、来るなら来い」
俺が呟き、煌が背中を向けた瞬間だった。
急激な窒息感に、俺は顔を歪めた。
スクリーンの攻撃か!?
しかし視界にスクリーンはなく。
おかしい。
なにかがおかしい。
四肢が縛られ捩られるような錯覚に、俺は風の力を放出させて、目に見えぬ縛りを切り裂こうとした。
「……っ、駄目か!!」
力を、もっと力を!!
風の力を爆発しているのに、まるでびくともしない。
どういうことだ?
他の皆は大丈夫なのか?
俺だけなのか?
そういえばと思い出す。
俺達が背中を向けた途端、石碑に置かれた皆はフルに力を発揮していた。皆それぞれに状況こそ違え、異変に"全力"を使わざるをえなかったのではないだろうか。
「……面白い」
ならば俺だってやってやろう。
彼にも石碑をひとつ担う身であるのなら、やられたままで、レイの電撃を待っているだけでは性に合わない。
ならばここは――。
「この場の瘴気を利用してやる」
俺は闇使いだ。
瘴気の源が闇ならば、俺が従えないはずはない。
芹霞の命を支え続けたこの力で、この場を逆転させようじゃないか。
芹霞のための力だと、あえて闇の力は使わずにいた。
裏世界に入った時に、対抗手段として闇を使ったけれど、それはあくまで吸収目的の、抗するためだけのもの。
闇が今まで芹霞を守り続けていたならば。
今まで通り、芹霞への想いを闇に込めよう。
芹霞。
芹霞。
お前にこの想いが届かなくても。
お前が俺のことを忘れ続けていても。
俺がお前を覚えている限り――
お前を愛し続けている。
一方通行で終わらせる気はない。
このまま朽ち果てる気はない。
もう一度、お前をこの腕に抱くために俺は――
「闇よ、俺の元に集え!!」
お前への愛の証を、闇の力を、
増長させることにする。
さあ、禁忌としていたこの力を解放するんだ。
とくと味わえよ、周涅!!