シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

流出 桜Side

 桜Side
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幅広の一本道を走る。


つきあたりにあるそのドアを開けた瞬間――

凄まじい炎の風が走ってきた。


密封された一酸化炭素が、開けたドアから入り込んだ酸素によって大爆発を促す、火災現場でみられるバックドラフト現象にも似ているが、突然の出迎えに私達は面食らった。


「壁に張り付いて!!」


玲様の声に、慌てて私達はドアを挟んで両側に分かれ、その風をやり過ごすけれど、まるで鎌鼬(かまいたち)でも走ったかのように、床には深い亀裂が刻まれていた。

由香さんと芹霞さんは、私と玲様と七瀬紫茉の向かい側の壁に背をつけ、まるでギャグ漫画のように、両手を中途半端にあげたガニマタという……有様。しかもひきつった変な笑いが顔に張り付いている。


「ニャ……」


私の肩から、おかしな笑い声がしたけれど、あえて無視する。


二の手がなく、慎重に真ん中に集まれば、緊張にふらふらとなった由香さんと芹霞さんが、ぽつりぽつりと話し出す。


「まともにあれ食らったら、ボク達……」

「ミンチの上に、こんがりてりやき……ハンバーグ?」



「よけて!! もう一回くる!!」


ドアを挟んで反対側に居る玲様の声にて、私達は再び、瞬時に同じ壁に張り付いた。

しかし今度は、その力の放出は何度も繰り返され、更にはその力が増したのか、やがてドア枠を崩し、周辺の壁を瓦解させていく。


私は自然の力は発動できないけれど、玲様や櫂様の力を見ている限りにおいて、こうした力を短く頻発させるというよりは、ひとつのものを長く強く放出していたような気がする。

こうした力ならまるで――。


「恐らく、朱貴の"外気功"だ」

「え? しかし外気功は、風はともかく炎は……」

「紫堂の力を元に考えれば、こうした単発的な力の連発は精神力の無駄使いだ。それに素早く動く相手には、こうした力の使い方は効率が悪い。それを知らないわけはないだろう、朱貴だって炎の力があるのだから。だからこれはきっと外気功。出来るんだよ、朱貴は。武芸の基本すら、力を織り込める。きっと呼吸をしているように無意識にね」


朱貴の潜在能力はどれ程のものなのだろう。

外気功は武芸の基本として紫堂の警護団の入団基準のひとつにはなっているが、実戦力として外気功を多発させて使えるのは、一握り。それは心身に負担がかかりすぎるからだ。

あの体力馬鹿の煌とて、乱発すればぐったりとなるものだ。

まああの馬鹿蜜柑は、外気功より遙かに高度な炎の力を使った方が、外気功を使うより元気だというふざけた奴だけれど。


「……玲、芹霞と由香が!!」


七瀬紫茉が声を上げた。

芹霞さん達の方の壁の崩れ具合が早い。

このままだと全て壁が崩れて、芹霞さん達に被害を被ってしまう。

力の放出は止まることなく、私達も身動きがとれない。
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