シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「紫茉ちゃんは利得もないのに捨て身になって、あたし達を……櫂を玲くんを皆を助けようと動いてくれたのよ。自分の意思で。そういう人が、本当の強い人っていうんじゃない!!」
「お前になにがわかる!!」
爆発したように周涅が怒鳴れば、それが芹霞さんの怒りにさらに火をつけてしまったようだ。
「わからないわよ、紫茉ちゃんを泣かす奴の考えてることなんか!!」
負けない。
いつものことながら、キレた芹霞さんが怯むことはなく。
「あたし達にわからせたいのなら、妹の笑顔を一番に考えて行動してよ!! 禁断なのか重度のシスコンなのか知らないけどね、紫茉ちゃんが大切なら貫きなさいよ!! このドSの紅皇サンみたいに体張って愛を表現してみなさいよ!! ちょっとこの人も表現能力に難ありで、言葉足りなすぎで見ててイライラしてくるけど、まだこの人なら紫茉ちゃんを嫁に出しても我慢出来るわ!! あんたはムリ!! 色んな意味でムリ!!」
嫁…ということは、一応芹霞さんの中で、彼女べったりだった恋人気分だった時期は終わり、朱貴に託そうという…子離れした親の気分になったということだろうか。
人の恋愛に先輩風を吹かせられるようになったのは、玲様との恋愛で、少しか恋愛感覚が鍛えられたのだろうか。
ちらりと朱貴を見てみれば、秀麗な顔がひくついている。怒り半分、ショック半分……?
朱貴も思うことがあるのだろう。触らぬ神に祟りなし。
「芹霞、あたし嫁には……」
七瀬紫茉も引きつった顔で芹霞さんを止めようとしているが、芹霞さんは止まらない。
ぴしっと周涅に指をつきつけて叫ぶ。
「七瀬周涅!! こんなに可愛い妹泣かせておいて、威張り腐るな!! この罰当たり!! 紫茉ちゃんの結婚式には呼ばないからね!! 紫茉ちゃんとバージンロードなんて、絶対歩かせないから!! あたしが歩く!!」
「……話がずれてるような……」
聞こえてきたのは、多分遠坂由香。
「超ウザすぎっ!!」
「……わ~お」
再び遠坂由香が、ぼそりと呟いた。
強敵相手に、直球。
芹霞さんに変化球など期待する方がおかしいかもしれないけれど。
だがなんだろう……。
空気はこんなに険悪で緊張が孕んでいるというのに、胸がすかっとするのは。
玲様もそうらしい。
周涅の反撃に備えて身構えてはいるが、私に向ける顔は苦笑している。