シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「氷皇が…あの集合写真を見せたのは、何か意味があると思うんだ。そして僕は、久遠と久涅の他にも、どんな顔ぶれが揃っていたのか…もっとよく見てみたいんだ」
そう言えば、玲様は画面に向かって言われていた。
朱貴と情報屋の聖が写っているのではと。
私と櫂様は、玲様達の後ろで見ていたから、はっきりと写真の顔までは観察出来ていなかった。
「五皇の刻印は置いておき、翠が言っていた皇城の紋章。皇城は各務家と縁があるのかと思ったけれど、久遠や翠を見ている限りにおいて接点はなさそうだ。
だけど、久遠を含めた…各務の家前での集合写真に、本当に朱貴が写っていたのなら…無関係ではなさそうだね」
「しかし玲様…朱貴は、皇城側ではないと」
「ん…そうなんだよ。今の処、各務と皇城を結ぶ者は朱貴しかないんだけれど、朱貴が否定する限りこの線(ライン)は弱くなる。
別の線(ライン)では…式、使い魔だ。僕達の仲間に似せた…あれは、皇城が現われてから出たものだ。結局"約束の地(カナン)"が爆破され、誰が放ったものか判らないけれど…"オッドアイ"を強調されるのなら、イチルにどうしても行き着いてしまう。黄幡会…そちらから同じ九曜紋を持つ皇城が関係がある…のかもしれない」
「"オッドアイ"を放ったのが、久涅の可能性は?」
「何か…違う気がする。上手く…言えないけど」
玲様は目頭を指で押さえられた。
「そう色々考えるとね、元老院だけではなく…皇城も、"約束の地(カナン)"を狙っていたと言われているようにも思えるんだ」
元老院だけではなく?
「メリットは何でしょう?」
「判らない。各務なのか、天使なのか…久遠なのか。それとももっと別のものなのか」
腕を組んで玲様は考え込まれた。
「そして"約束の地(カナン)"にはおかしげなスクリーン、蛆や黄色い蝶…僕達が東京で経験したもの全てが再現されていたという。"オッドアイ"の使い魔だけではなく、全身を鎧より強度に固めた、黄色い外套男も現われた。
大勢の人間達が一斉に消えたこともまだ説明ついていない。
あの黒い塔が出現した理由も、炎で塵に還したはずの"生ける屍"が何故蘇ったのかも、何1つ判らない。
そんな"不可視"の状況で、確かに……判る奴には"可視"の、目に判る"何か"が起きていたんだ、"約束の地(カナン)"には。
そこを爆破した紫堂も、何らかの形で"約束の地(カナン)"に関わり、狙っていたのだろう。そうした悪しき"心"に……今まで気づかないでいたとは」
玲様から、ぎりりと奥歯を噛みしめるような音が聞こえてきた。