シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「君がなにを定義して"人間"としているかはわからないけど、彼らは肉体を持たないが感情がある。感情があることを人であるのだとしたら、心や言葉があると言い張る玲くんにとっての0と1も、同じ存在だと言えるだろう。周涅ちゃんにとっては、蛆虫以下だけどさ。だけどまあ、こちらの意向を理解してくれるだけ、蛆虫よりちょっとましかなあ」


電脳世界の言葉を解せない周涅達は、人間を電脳世界の住人にさせることで、電脳世界を内部から統制を図ろうとしているのか。


恐らく、電脳世界のZodiacこそが、人間に近しい意思と理解を持つがゆえに、結果的に電脳世界を苛ます虚数の親玉のようなものなのかも知れない。

ああ、しかし……人間が体を捨てて電脳世界の住人になるなんて可能なのか。


思わず玲様に尋ねれば、


「僕は……生身にて電脳世界に足を踏み入れた。体のありなしは関係ないのかも知れない。だけど。Zodiacを電脳世界との繋ぎに利用出来たとしても、この胎児はどうだ? 生命を人工生命に転換し、人工生命の核たる0と1に変換出来たとして。そう何度も何度も電脳世界に接続できるはずはない!! 電脳世界に招かれたわけでもないのに、何度も侵入者を許すほど、電脳世界は甘くないはずだ!!」


「玲くんは招かれたんでしょう、電脳世界に。君なら、ソノ気になれば行けるんだろう? 君という存在は通行手形みたいなものだから」

小馬鹿にしたように、周涅は笑う。


「だから、電脳世界に虚数を送り込んで掌握する、新"TIARA"計画に君を迎えたんじゃないか。君から採取した遺伝子が、開いたんだよ電脳世界の扉を。あの胎児達は、下の機械で君の遺伝子から分析されたプログラムによって、電脳世界に通行可能な虚数に変換されている」


玲様が少しよろめき、芹霞さんがそれを支えた。


「そして君は、電脳世界を虐げる虚数の武器開発にも役だってくれたね。嬉しいね、玲くん。君は、必要とされる人間だったんだよ」


まだ抱きついたままの芹霞さんの手に添える玲様の手が、小刻みに振えていた。


「君が。電脳世界を愛する君が!! 君の遺伝子を媒介に、電脳世界を攻撃しているんじゃないか。君の存在が、愛する者達を苦しめているんだ。わかるかい、だから君はパパにも愛されなかったんだ」


「違うわ!!」

「違う!!」

「違うよ!!」


芹霞さんと私と遠坂由香が、同時に否定した。

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