シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



俺はねえ脳みそをフルに回転させた。

いつもいつも櫂を頼ってばかりの俺。

今もいい案を頼りてえとこだが、櫂は今取り込み中だろう。

櫂は俺に最後を託したんだ。

だとすれば、ここは俺がなんとかしねえといけない。

これを成功しないと、周涅の術が敗れる可能性はゼロになる。


「しくしくしく……」


チビが、周涅の術に打ち勝つまでの力がねえのか?

しかしなんだかんだとこのチビは、度肝抜くことをやってのける奴だ。

その潜在能力は計り知れねえ。

俺から見ても、チビの奥義とやらは凄まじい力だ。

なんでもありとはいえこの世界の天候を変えて落ちる雷は、まともに直撃したら、黒こげ通り越して煤でひらひらだ。

力の威力は申し分ねえ。


だとしたらその力の持続力がねえのか?

チビすぎるから、9つの石碑まで巡らねえとか?

しかし今、何度奥義を発動したよ。

悲しみに暮れているから今は中断しているが、あの後何度でも行けそうなほどに、奥義名を叫ぶその声にも元気があった。

しかし鉄の胡桃入りの全身を支える腕の筋力はないのは確か。

それは体型の弱点だとすれば、精神性が問われる術における弱点となりえるんだろうか。

とにかくチビの精神なんてどこにあるよ?

心か?

心ってあの小さな体の中か?


心臓?

脳みそ?


どちらにしても、外観的にすっげー小さいものであるのは確か。

それでも奥義を発動できる時点で、チビの力は心を超えている。

心臓だとか脳みそだとか、そんなものはきっと、チビの"心"でも、本質でもねえんだ。

チビの大きな力の源流は、そうしたモノに囚われるところにはねえんだろう。


奥義として威力を発揮できるほどの心が、チビにあるのだとすれば、それが周涅の術破りにまで至らねえのは、チビの実力不足ではない気がするんだ。

だとしたら?


鉄の胡桃を辿るチビの奥義。

まさか――、


「鉄の胡桃が途切れているのか?」


その可能性の方が大きくねえか?

むしろ、そんな気がした。


しかし今更、それを確認に来た道を戻ることも出来ねえ。


声張り上げたら皆が答えるか?

石碑の周辺に鉄の胡桃があったとしても、石碑と石碑の間で途絶えているかもしれねえし。

もし途絶えているものがあるのだとすれば、補修しないといけねえ。


二次元の点と線の全体図を、どうすれば一度に見れる?
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