シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

「もう一度…きちんと情報を整理したい。僕達には何が"見えない"のか、見える為にどうすべきか。

幸か不幸か…氷皇の打ち出したものは、『TIARA』計画とやらも含めて、全てメインコンピュータに送ってくれたようだ。

それが絶対に必要になるということを見越されて、設計主の僕が使えなくて四苦八苦していたのに、簡単に転送可能にされたのは、全くもって気分よくはないけれど、メインコンピュータでの情報解析は、僕にとっては本当の意味での"原点"だ。

電脳世界も関わってきてるし、ここはもう…僕のメインコンピュータ復旧を何としてでもやり遂げたいね」


「動くの、玲くんのパソコン?」


「何度か…試みているけれど、今の処可能性は0に近い。前よりは手応えはあるけれど、作動するだけの電力…、純粋な電磁波が形成されないんだ。今の東京は…虚数に満ちているからね。

後は"彼女"の働きと…ああ、芹霞。特別な仲ではないからね? それは誤解しないで? 後でちゃんと紹介するから。僕を信じるんだよ?」


芹霞さんはこくりと頷いている。


バタバタバタ…。


「ああ…中継するパソコンが欲しいな。あの青色…心底腹立たしくて触れたくもないと思ってたけど、今となっては本当に喉から手が出る程欲しいよ。

今の僕の持つ改造チップは限りあるし、それを動かす機械を買おうとしても、多分先回りされて買えないだろうし、そこを突かれて利用されるのも嫌だし。

ふぅ…折角、あの2人がいなくて隠密行動出来るチャンスなのに、買い物1つ出来やしない…」


ぶつぶつと玲様は独りごちている。


バタバタバタ…。


「玲くん、今日お仕事はいかないんだね?」


「仕事?」


「うん。毎日…お出かけしてたでしょう?」


すると玲様の顔が、苦しそうに歪まれた。


「ああ…あれか。行かないよ、僕は」


それは不機嫌そうな低い声色で。


バタバタバタ…。


「僕だって我慢の限界だ。"約束の地(カナン)"をあんな目に遭わせた奴らの思惑には、僕はもう乗りたくないし。『TIARA』計画? もう…僕を利用させない」


何かが…変わられたと思う。

揺れて儚げだった玲様には、確固たる意思がある。


「もう…流されるままでいるものか」


それが櫂様と芹霞さんの存在故の"強さ"であればいいのだが、もしもその逆…"犠牲"に出はしないかと、それが気になってしまった。


「大丈夫だよ、桜。僕は…戦うから」


私の杞憂を察してか、玲様は超然と微笑まれた。

どことなく、櫂様を彷彿してしまい、何だか泣きたい心地になった。


バタバタバタ…。
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