シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

それじゃなくても俺は頭悪いし、難しいことなんてちっともわからねえ。

地面が動くと考えるより、俺の耳も騙されている…そう考えた方が自然だというのに、俺の心はそれでは納得しねえんだ。


理屈でどうこう考えるのは不得手だからこそ、問いかけた俺の心は、本能は――ただひたすらストレートに、俺の耳を信頼しろの一点張り。

だったら俺はブレず、それで突き進むしかねえ。

俺は、迂回の出来ねえ男だし。


だが今の状況を突破するには、俺だけの耳だけでは覚束ねえのも確か。

時間がかかりすぎるのと、耳を信用して、その先どうすればいいのかがさっぱり。


だけど俺はひとりじゃねえんだ。

たとえ相手がちっこいリスでも、真実を看破する"心"を持っている。


俺にとってはこのリスは、信頼のおける玲のようなものだ。


……玲の劣化版だけど。

すんげえ劣化版だけれど。


ふたりの"心"が示した先には、必ず解決策がある。


櫂なら、なんと言うだろう。


だけどあいつなら――


――あはははは。地面の方が動いているか。面白い。


あいつなら、賛同してくれると思うんだ。


そして続けてこう言うだろう。


――なあ、なんでそのことを翠の式神は気づかなかったのだろう。九星の陣の石碑の位置と、移動する方向は掴められるのに?


と。



多分、その理由こそが周涅の罠。

俺の直感は、警告を発しているのもまた事実。


早く、しなければ。



「チビ、頂点に行き着く前に奥義を発動して即確認して、奥義が途切れた場所を俺に報告!! 目を瞑ってもなにをしてもいい、今までのような目だけの確認ではなく、お前の心が消えたと感じた場所を教えろよ」

「了解」

「それから実際はどうであれ、手前側の真ん中が1となるようにして答えろ。石碑の位置で教えろ。この形でだ」



四 九 二
三 五 七
八 一 六


「うん、わかった」


「今回は途切れた場所の検証だ。だから順序や一筆書きに拘らず、お前がやりやすいように奥義を発動させろ。おっと今は言うな。俺の耳が変な先入観を持つといけねえ」


「わかっ……ええええ、もう!? きゃあああああああ!!」


何度も"高い高い"されると、快感になってしまうものらしい。

明らかに喜悦の声を上げて、リスは空にて点になる。



「究極奥義、ジャンピングサンダーボルトアタック!!!!」


まくしたてるかのような、チビの声が響き…例外なく雷鳴と稲光、そして轟音。

対角線上の二角からスタートさせたらしい。


「頑張れよ、チビ」


薄く笑いながら、俺は目を瞑り、耳に集中した。

二方向の音を俺の聴力が必死で追う。
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