シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ん…。そういえば、あそこには…結構な電力があったな。まだ虚数に満ちる前だったから、今となってはどうなっているか判らないけれど」
「あそこって?」
「僕が行ってた処。だけど…僕は何処に連れて行かれていたのか、よく知らないんだ。わざと判らないようにしていた感がある。目隠しされて蛇行歩行させられて、記憶の固定化も妨げるような徹底ぶり。皆無口だったしね。
……ああ、そうだ。芹霞に言ってなかった」
「なあに?」
「僕にくれた携帯のストラップ。そう、ティアラ姫。今ね…ただのティアラちゃんになって、拉致されているんだ」
「ティアラちゃん? 拉致?」
「ん…実はね、その連れられた場所で、引っかかってしまって…ティアラ姫の星冠(ティアラ)がもげ落ちてしまってね…」
そういえば、玲様は芹霞さんから貰ったティアラ姫を…。
「僕、USBに改良していて、星冠(ティアラ)を蓋にしてたんだけれど、それを携帯しているのがばれちゃって…取られたんだ」
「OH!!! それは早く助けにいかなきゃ!!!」
「……待てよ。USBがまだ捨てられてなかったら…。あの中に入っているプログラムを遠隔で操作出来れば、場所が特定出来るかも…。
ああ、だけど駄目だ。結局はメインコンピュータが動かないと話にならない」
バタバタバタ…。
「何だか随分と家の中が騒がしいな」
「そうですね、バタバタ…」
私も頷く。
こんな朝から、廊下で走っているのは誰だ?
当主がいないからと気が弛んでいるのか?
「玲様、ちょっと様子を見て参ります」
私は廊下に出た。
走っているのは紫堂の給仕達。
その1人の女性を呼び止め、事情を聞いた。
「泥棒が…忍び込んでいるようです!!!」
この、紫堂本家に?
警護が強固なこの屋敷に?
ありえない。