シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「セコンド!!」
カーン。
「ああああああああ!!」
頭の中の鐘の合図で、吠える俺から放たれる赤い光が急速度で真上に伸びる。
そしてそれはチビを捉えたような感覚があった。
「なにこれ、きゃあああああ!!」
「悦ぶな、真面目に発動!!」
「り、了解!!」
バリバリとした音と青い稲光が、下に落ちるではなく…真上に向かった。
赤色と青色が混ざり、紫に変色した光は四方八方に拡がり、やがて果てなく見えた世界の途中で不自然に止まると、地殻を震わせるほどの激震を生んだ。
そこが――
俺達が閉じ込められた世界の"限界"か。
ならば、突き破るまで!!
強さを増す紫の光。
あんなチビだって頑張っている。
「俺だって!!!」
――煌。
不意に、どこかで櫂の声が聞こえたような気がした。
きっと櫂の激励に違いねえ。
たとえそれが幻でも、俺にとっちゃ頼もしい援軍だ。
櫂の信頼を、裏切るものか!!
「いっけええええ、チビぃぃぃぃ!!!」
バリバリバリバリ…。
やがて――
「よし、行った!!」
俺の声と共に、なにかが割れる音がした。
硝子のような細かい破片が、きらきらと煌めきながら降ってきては、消えて行く。
これはスクリーンの一部なのだろうか。
まるで涙のように儚い、幻想的な景色だった。
「………」
その中、破片を避けるような見事な飛行術を見せて、悠々と降りてくるのは、これまた幻想的なムササビリス。
情緒の欠片もなにもねえ。
無言でいる俺が差しだした掌に、当然のように二本足で着地すると、やはり"袋"を体内にすっとしまって、何でもなさそうな顔で、壊れゆく空を見つめた。
背中越しに聞こえる、チビの堅い声。
凛々しく成長したかのような、男らしい玲の声。
「ワンコ。"高い高い"の間、僕見たんだ。地面、ゆっくりだけどくるっと廻ってた。ありえるんだね、そんな非常識なこと。……僕、大人になったよ」
「……大人が言うなよ、"高い高い"って。それに――。地面が廻るより、お前の方がよっぽど非常識だぞ?」
「それは過去のことさ」
「いや、現在進行形で。つーより、お前認めてたのかよ、自分が非常識だって」
チビの返答を待たずして、バーンという大きな破裂音が鳴り響き、俺達はそちらに気を取られた。