シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

投影 櫂ide

 櫂Side
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猛るように轟く闇色の風が俺を取り巻き、螺旋の力となって四方に突き抜ける。


弾かれ、切り裂かれ、闇に汚染されて朽ちる白いスクリーンは、消え去る瞬間に面を引き延ばすかのようにして苦悶の顔を飛び出させながら、新たに別のスクリーンに再生する。


悍しいほどの忌まわしい憎悪を向ける白と、それを浄化しようとする俺の闇の黒は、世の理に反した定義(ルール)に乗っ取りながらも、力が場を制するという弱肉強食の関係だけは保ち続けている。


負けるものか。


石碑をひとりで担当始めた瞬間から、スクリーンの猛攻撃が凄まじい。

まるでひとりになることを見計らっていたかのように、実にタイミング良く、そして容赦なく、攻撃してくれた。


明らかに感じる、憎悪と殺意は、まるで人間から向けられた怨恨によく似たもので、それが瘴気の正体とするには、いささか説明が不足すぎる気がする。

スクリーンをゴムのようにして、向こう側から垣間見せる"なにか"の持つものだとすれば、そこに術者たる周涅個人の感情が含まれているのかどうかはよくわからない。


それでも俺に止めをさす気でくるというのなら、俺だって容赦なく迎え撃ってやる。


こんなに闇の力を出したのは、"約束の地(カナン)"以来だろうか。

あの時は煌の力があって、闇の力は爆発するように放出された。


あの快感が忘れられない。

あの爽快感が忘れられない。


それを思い返しながら、俺は不謹慎にも……"約束の地(カナン)"以外の場所で、思い切り力を使えることができたことが嬉しい気にもなる。


突き抜けろ。

もっともっと、闇を。


貪欲な俺に闇が煽られ、闇に煽られた俺はさらに貪欲となれば、気分は自然に高揚し、さらなる高みを目指して快走したくなる。


限界を突破したい!

抑えていたものが解放されるこの喜びを、もっともっと!!


しかし――

俺の理性が、今在る現実に疑問を持った。



「なんでレイの奥義が発動しない?」


時間的に、もう9つ目の石碑についていていいはずだ。

レイの奥義は雷。


しかし空はおろか、地面にも稲光や雷鳴は聞こえてこない。


手間取っているのだろうか。


煌がレイを連れている以上、石碑までは問題なく到達していると思う。

それなのに奥義が発動されないのは、一体どうしてだ?


「煌、どうした!?」


声を上げども、返る返事はない。

空は……相変わらずの鈍色のまま。


俺は、異常を感じた。


「翠、大丈夫か!?」

「大丈夫だよ、なんとか!! ワンコはまだ!!?」


翠からは応答はある。

しかし煌から応答がない。


煌になにか起きている!!?



ここからではよく見えない。


「ほほほほほほほ」


その時、真上に浮かんで笑い声を発したのは吉祥。


「ワンコ殿とレイ殿は、敵の術中におるようぞえ」


煌のいる九の石碑を眺め下ろし、吉祥はそう言った。


「別空間に閉じ込められているぞえ?」



彼女がそう教えてくれたから、幼馴染の危機に俺は――。

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