シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「今、給仕達と警護団の皆様が捜索していますが…」
窓からは大勢の人間の捕物劇。
まるで犬猫を追いかけているような。
ある意味…長閑すぎて、腹立たしい。
「唐草模様の…風呂敷の荷物を背中に背負っていたらしいです」
何処の時代の盗人だ。
しかも。
それで"泥棒"だと判断する紫堂も紫堂じゃないのか?
「何か窃盗の被害でもあったのか?」
「いえ、唐草模様の包みを背負っているだけらしいですが…」
「それだけで何で"泥棒"?」
「その模様を好むのは"泥棒"だからということで」
「誰がそんなことを?」
「さあ…? 気づいたら皆、騒いでいました」
………。
馬鹿じゃないのか、ここの給仕達は。
確かに、警護が厳重なこの屋敷に忍び込めるのは、それ相応のスキルを持った人種なれど、唐草模様の風呂敷を持っているだけで、何故それが"泥棒"の決め手となりえるんだ?
誰だ、そんなことを言い出したのは。
その時だった。
「いたぞ!!!」
「何処のスパイだ!!!?」
そんな声と共に。
「痛いってば痛い痛い!!! もう…あの情報屋!!! 何でボクをこんな場所にポイするんだい!!! あいつは何処だい!!!?
だからボクは!!!!
泥棒ではなく!!!
此処の次期当主に弟子入りした!!!
アニオタゲーマーの…」
「由香さん!!!」
私は声を荒げながら、窓から飛び出した。