シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ゴボウちゃん、どうしたのその姿!?」
「剣鎧、お主…!!」
翠と吉祥の声が同時に上がる。
「翠殿の式神としての姿は石碑にて。その縛りを越えて、なんとか我、本来の姿にて現われたものの、この姿は幽体。長くは持ちますまい。しかし、小さき姿よりは力はあるはずですぞ!!」
「離せ、剣鎧我になにをした、この緊縛を解け、解かぬか~!!」
「今の状況では、お優しい翠殿は吉祥様をどうこう出来ますまい。ならばここは我が、この剣鎧が助力致す!!」
護法童子は、俺達の味方に来てくれたのか。
「申し訳ございませぬ。翠殿の一大事に直ちに駆け付けることが出来なく……。この姿になるまでに、時間がかかり申した」
「ゴボウちゃん……。そんな姿になって力も強くなって、なんていい式神なんだろう」
「翠殿……」
………。
そんな姿って、どんな姿なんだろう。
水を差すのも悪い気がして、力を放ちながら悶々としていると、護法童子の姿が見えずにやきもきしているのは、煌も同じようで、
「お前らだけで盛り上がるなよ、小小々猿がなんだよ、勝手に話進めるなよ!!」
悲痛な叫びに聞こえるのは、気のせいだろうか。
「ゴボウちゃんは……」
悔しがる吉祥の声を無視するように、翠の声が響く。
「大きくなったゴボウちゃんは、すっごいイケメンだったんだよ!!」
大きくなった?
イケメン?
翠の顔をしたあの式神が?
「確かに小猿の顔は悪い部類じゃねえけどよ、小猿の顔がすっごいイケメンなら、此の世はイケメンだらけだって!! まあ俺の環境も、イケメンだらけだけど、そんなの稀だぞ稀!!」
煌の笑い声が聞こえるが、俺は翠は十分に稀な美少年だと思う。
それを猿扱いしている強者は煌やレイであり、確か芹霞や遠坂も煌と同じ呼称を使用してはいるが、煌ほど猿扱いはしてなかった気がする。
「そ、そりゃあワンコの言う通り、イケメンっていうのは、ワンコや紫堂櫂や紫堂玲や朱貴や兄上や……そう、俺の環境から、俺と情報屋を省いた人間がそうだけど!!」
『……ぷっ。あの男も省かれた』
今、ニノの声がしたように思えたが、まだアップデート終了の報告はきていないから、幻聴に違いない。
「翠殿は、我の幼き顔に似ておりますれば、この顔は翠殿の未来の姿に……」
「本当!? 俺、ゴボウちゃんに似ているの!? だったら……」
「もと同じ顔で和んでるんじゃねえよ!! チビサクラをなんとかして、俺にも顔を見せろよ!! そのすっごいイケメンっつーのを!! なんで俺の周りはイケメンばかりなんだよ!! 式神までイケメンってどんな冗談だよ!! イケメン撲滅運動おこすぞ!?」
そういう煌こそ、イケメンという類に含まれる……ということを知らないのは本人だけ。
「俺、なんで怒ってるんだよ、があああああ!! 状況を察しろよ、俺、怒り続けていいような状況にねえんだよ!! ……おい、チビ…チビ!? 櫂、チビが意識なくした!!」
状況は一気に悪化する。