シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
以前白いスクリーンを通して、玲くんは電脳世界に行ったらしいけど、今此処に白いスクリーンはなく。
「玲くん、どうやって!? 白いスクリーンもないのに」
「スクリーンはただの媒介で、それ自体が入り口ではないんだよ。それが証拠に、S.S.Aで僕が電脳世界に導かれた時は、スクリーンを経由していない。たくさんの電気が溢れかえれば、扉は開く。それが一時的にしてもね」
じゃあなんだったんだ、あの意味ありげな白いスクリーンは。
だけど電脳世界の申し子玲くんが、関係ないというのなら、あたしがどう思おうとも関係ないのだろう。
そんな玲くんに、周涅が言った。
「扉を開いて、電脳世界に行ったところで、招かれてもいないたかが人間が無傷でいられると思うのか!? お前の思い通りに味方になって動くとでも思うのか!?」
周涅が会話に参加出来ると言うことは――
ああ、やっぱり。
あちら側では小猿くんが押されている。
ある意味、周涅は情勢を推し量るのにわかりやすい。
あたしは、心の中で頑張れ頑張れと念を送り続ける。
玲くんは薄く笑った。
「お前に言い様にされ続けた電脳世界を、僕の思いのままに動かせるとまで僕は自惚れていないよ。それに今、無理矢理電脳世界に入ったら、お前の言う通り…無傷ではないだろうね。まぁ、肉体を通せばの話だけど」
くすくすと笑う玲くんに、周涅の顔に怪訝な色が浮かぶ。
「――遠隔操作なら、あちら側に肉体は必要ない。
ふふふ、出来るんだよ、彼女の――」
それは、玲くんの言葉が微笑んだのと、舌打ちした周涅が呪文を唱え始めたのと、ほぼ同時に起こった。
「坊ちゃま、遅くなりました!」
そんな声が、場に割り込んで来たのは。
そう、場に弾むように飛び込んできたのは――
「――百合絵さんのサポートのおかげでね」
巨漢…藤百合絵だった。
なんだろう、物凄い援軍がかけつけてくれたような頼もしい感覚になったのは。
百合絵さんの実力はわかっている。
それ以上のその迫力ある存在感。
それは由香ちゃんも同じだったようで、思わず、黙ったまま両手を互いに握りしめ、涙目で頷いた。