シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
自分の力を見せつけようとして、ふたつの世界を股にかけた結果、予想外の反撃をくらって身動きがとれなくなった周涅。
櫂と煌の力、そして小猿くんの猛攻。
三者相手に、こちらをなんとか出来ると見くびった周涅の負けだ。
しかし、映像を見ている限りにおいては、櫂達が周涅を押していても、周涅は崩れていない。
押し返せるだけの余力はあるらしい。
このままなら体力勝負、平行線。
櫂達も限界近くの力を使っているはずなんだ。
反撃だ。
ここで全員で周涅に反撃をすれば、周涅はあちら側を手放す。
あたしの力は微々たるものでも、こっちには玲くんの他にも、百合絵さんも桜ちゃんもクオンも、紫茉ちゃんも朱貴もいる。
由香ちゃんだって邪気眼がお目覚め中なんだ。
大丈夫。
行ける。
周涅を抑えられる、絶対に!!
櫂達の居る世界を潰させはしない!!
そう臨戦態勢に入ったあたし達を制したのは、愉快そうに笑い声を発し始めた紅皇サン……朱貴だった。
「引け」
無情にそう言った。
「どうしてだ!? 朱貴は周涅の味方なのか!?
お前だってわかるだろう、こちらで抑えないと、結局翠達だって…!!」
紫茉ちゃんが代表して、不満の言葉を投げる。
周涅は妹も敵に回して、しかし朱貴を味方につけたと!?
何故に。
どうしてそうなる!?
「そういうわけではない。翠を信じろ。あいつが周涅を抑えているから周涅は思うようにこちら側で力を出せない。過信故の自縄自縛、今の周涅は中途半端だ」
そうだからこそ、もう少しだけ。
もう少しだけ櫂達を支援するような力があれば――。
周涅を殺すのではない。
捕らえて、あちら側の世界への執着を捨てるように皆で脅せば。
あたし達には敵わぬと、認めさせれば。
そのあと一押しを――
「さぁ……玲を見ていろ。面白いことをしでかすから」
玲くんに託すのか。
「いいか。電脳世界の力を媒介に、表世界と裏世界2つが連動し周涅の術は動いている。術が発動している以上、その術を破る…向こう側での"勝利"が必要だ。周涅は、術者が消えれば術も消えるなどという、単純な術など使わない。自分に万が一のことがあれば、それは報復として、こちらかあちらかどちらかに報復のように跳ね返るように作っている。周涅は、そういう男だ。
それを見抜いた玲を信じろ。翠達の力と共に…」
朱貴は――
玲くんがしようとしているものをわかっているのだろう。
だからあたし達を止めたんだ。
朱貴は、玲くんにやらせたいらしい。
それは師匠としての、弟子への信頼なのかもしれない。
玲くん――。
周涅自身を傷つけるのではなく、
世界を違えたここから、一体なにを――!?