シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
あたし達は、渋々朱貴に従った。
だけど、もしものことがあれば、あたし達は全員で周涅を抑える。
その覚悟でいるのは、あたしだけではない。
「百合絵さん、さっきメールで指示したことは?」
「準備はOKです。いつでも!」
いつの間にやら玲くんは、百合絵さんにメールしていたらしい。
まあ玲くんは電気使い。携帯を媒介にしないで、メールくらい文字信号を送れるのかもしれない。
「では、作戦は変更となったけど開始しよう」
「わかりました。ぷふ~」
床下から湧き上がるような熱は、電気の力…電磁波だったらしい。
灼熱と化した部屋も、百合絵さんが来てから鎮まったような?
あれ…百合絵さんも力があったっけ?
周涅が慌てて、玲くんと百合絵さんに掴みかかろうとしたけれど、玲くんから突如発光された力に弾かれたように、それ以上は前に進めなかった。
「くそっ、あいつらの抵抗がなければ……こんな力など!!」
悔しそうに言い捨てる周涅が、口早に続ける。
「お前、なぜ……この状況で、そんな電気の力を……。サーバーからの電気は虚数がまざり、0と1に純化していないから、そこまでの力にならないはず……!」
「僕が僕のメインコンピュータを作動させようと、百合絵さんに解放を頼んでいた東京の力さ。今は情報を得るよりも、僕には櫂や煌の命の方が大切なんでね。
あいつらの窮地を見過ごすことはできない。世界が違えば、僕が絶望すると簡単に思うな。僕は昔のように諦めたりしない。あいつらが危機なら、僕が助けるまで。それは摂理。蛆虫にも蛆虫なりの矜持とやり方があるのさ。
僕だって……離れていても彼らと共に戦える!」
その叫びに、桜ちゃんの体がびくりと揺れた。
桜ちゃんの顔には、悔しそうな色が浮かんでいた。
櫂達と共に戦いたいのは、玲くんだけではないのだろう。
そしてそれは桜ちゃんだけではない。
ただ見ているだけのあたしだってそうだ。
祈るだけしか出来ないのはもどかしすぎる。
周涅と玲くんの会話が続く。
「この世界と向こうの世界は別次元。肉体なしにどう移動するというんだ!? 共に戦えるはずはない!」
「心さ」
玲くんは、自分の心臓の位置に手を置いた。
「心で繋がる。僕の意思を0と1に一度分解して再構成させて、百合絵さんが解放した純粋な0と1を纏い電気信号のひとつとして、櫂達を苦しませているこちらのサーバから向こう側の肉体に繋ぐ」
分解も再構成も、繋ぐという意味すら……あたしには難しすぎて感覚が掴めなかったけれど、桜ちゃんはわかったようだ。