シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



あたし達を悲しみの淵に沈めるために、向こう側の世界を中継してくれた周涅のおかげで、より身近に感じられる櫂達の環境。

あちら側の世界が投影された瞬間から、こちら側の…胎児だらけの気持ち悪い部屋の景色は、櫂達の居る世界に同調し、どちらの景色も消えぬ程度に溶け合っていた。

それは――目にできる現実でありながら、どこか現実離れした違和感をも同時に感じさせるもので、だからこそあたしは、こちら側とあちら側という線引きが出来ていた。


この感覚は、きっと……起きていながら夢を見ているような感じなのかもしれない。

あるいは、夢の世界にいながら、現実を認識しているという感覚なのか。


それが玲くんが発光することによって、人影の輪郭を残したまま、こちら側の景色だけが極端に薄まり、……だから余計に、玲くんの奥義は…あたしがまるであちら側に居合わせているかのような、凄まじい臨場感があった。


最新式の設備が整った映画館だって、何十億かけてCGを3D合成したところで、ここまでの迫力は出せやしない。


掌サイズの小リスが――

とんでもない大技を披露した。


昏(くら)くなった空に、光る稲光。

そして見ているだけでも、地面がぐらぐらしそうな轟音をたてて、裏切り者を真上から直撃!!


小リスが。

あの小リスが!!


この興奮をどう伝えて良いのかわからない。


「さすがは玲だ!! 成功だぞ!!」


紫茉ちゃんも目はキラキラだし、


「さすがは師匠、無敵(チート)技まで編み出していたのか!!」


由香ちゃんの目はギラギラだし。


あたし達はとにかくもう、歓喜に発狂寸前だった。

桜ちゃんの目はくりくり動くのはいつものことなれど、口がぽかんと開いたまま。


凄い、凄いや小リスの玲くん!!


リスなのに。

小リスなのに!!


そしてあたしは思わず叫んだ。

決まり切った台詞のように、言葉がすらすらと口に出て来る。


「魔王周涅よ、小リスを侮ることなかれ。

小リスこそが、邪眼の持ち主由香様との双璧となる、救世リスなるぞ!! 

どうだ、小リスの聖なる力を思い知ったか。

これぞ天誅である。はっはっは!!」


腰に手をあて、あたしは笑う。

誇らしい小リスを自慢して、どこまでも高笑い。


なにこれ、凄く気持ちがいい。
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