シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


…とは思うが、俯いたまま体を固まらせている周涅に届いているのかどうか。

周涅のぐったり感は、なんらかの衝撃を受けたのは間違いないとは思う。

立っていられるということは、かろうじて生きている。

周涅が死んだら仕掛けが作動するのなら、あんな大技で命を奪わずにいる小リスが、本当に偉大な神様のようにも思えてくる。


あっちの裏切り者は、小リス様が退治してくれた。



「魔王、破れたり!!

小リス様に平伏すがいい!!」



鼻高々のあたしは、相手が聞いていようが聞いていまいが、高笑いが止まらない。


やばい、この爽快感……くせになりそう。



「師匠……。厨二予備軍の神崎の中では、完全に「師匠<リス」になってるよ…。せっかく披露してくれたのに、神崎を中途半端に厨二に染め上げすぎて、ごめんよ…。なんだかボクの手に負えない症状が出て来たような気がする…」


そんな由香ちゃんの弱々しい独り言など、揚々気分のあたしは気づきもせず。


しかし、あたしのそんな興奮じみた快感も束の間、耳に聞こえてきたのは朱貴の声。


「周涅の…映像が消えないということは、周涅の術は消えていない」



確かに、周涅目線の映像は消えていないし、掠れもしていない。

ということは、中継している裏切り者はまだ消えておらず、ご健在ということで。


あちら側の映像では、小リスに向けられている皆の顔が並んでいる。


皆の大層驚いた顔が、小リスに向けられて……


「おや?」


……いなかった。



なんであれだけの大技、皆驚いてないんだ?

ここは大いに驚いて、さすがは玲くんだと賞賛するところだよね?


しかし櫂だって強張った顔で上を見上げたまま。

こっちからは、裏切り者の状態がどうなっているのかは映像がなくてわからないけれど、櫂も煌も力の放出を止めて見上げていられるのは、奥義が炸裂したおかげだよね?


いや、それよりあのリス……玲くんの声で喋って奥義名を叫んだよね?


まずそれからして、どういうことだと驚かないもの?

玲くんの声だって、櫂は気づいてなかったんだろうか。


まあ、仮に玲くんだと気づかなくても、リスがあんな大技やらかしたんだから、もっと騒ごうよ。落ち着いている場面じゃないでしょう、ここ。

へのへのもへじやよくわからない女忍者ならまだしも、こちら側に住まう常識ある人間ならば、もっともっと人として、素直で普通な反応しようよ。


クールにきめるところじゃないでしょう!?

リスだよ、奥義発動したの小リスだよ!?


小猿くんは……とばっちりの被害を受ける前に、直前で遠のいたみたいだけれど、彼の顔にも驚愕めいたものはなく、彼らしくない険しい顔つきのまま。


どうして皆、あの奥義をスルー!?
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