シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
だったら、煌。
理性より本能で生きるあのワンコなら。
間近で見ていたのだし、奥義についてはさぞかし……。
『……ちょっと』
不満げな声を出したのは、煌の頭に居る小リスだった。
小さい口を尖らせながら、煌の頭を片足でダンダンと叩いているようだ。
『反応しろよ、お前』
すると煌は言った。
なけなしの脳みそをフル回転させている時の、実に難しそうな…苦しそうな顔つきで。
『あ……うん』
言葉を濁したというよりは、それしか返答のしようがないというような、端的すぎる言葉。
すると愛らしい小リスの顔が、一気に険しくなった。
そして煌の前頭ぎりぎりに立って前屈みになると、逆さまから煌の顔を覗き込んだようだ。
しかし体が小さすぎて、思う位置まで頭を下げれなかったらしい。
今度は寝そべるような体勢になり、ずりずりと落ちない程度の位置まで匍匐(ほふく)前進し、そして器用に、小さすぎる両足と片手で奴の前髪を掴みながらバランスを保ち、空いている反対側の小さな手で、煌の額をぱしぱしと叩いて不満を訴えた。
『うんじゃないだろう? なんだよその無反応』
小リスの矜持が傷つけられたらしい。
こちら側にいれば、お祭り状態なのに。
『お前がチビサクラと呼んだあれを、焼き焦がしたんだぞ!?』
『あ……うん』
またもや同様な反応に、小リスの玲くんはふさふさの尻尾も使い、とにかく煌の顔をパシパシ叩いて、憤慨しているようだ。
『もっと言い方あるだろう!? 凄いとか強くなったなとか、流石だなとか。感動したとか、感動したとか、感動したとか!!』
小リスは、ひたすら煌に感動して貰いたかったらしい。
『あ……。なんと言うか……うん』
しかし煌の反応は微妙なまま。
眉間に皺を寄せながら、煌は言いにくそうに言った。
『インパクトに欠ける、というか……』
『えええええ!?』
驚いたのは小リスの方で、煌の上から落っこちてしまう。
それをすかさず煌が掌で受け止めた。
『なぁ、玲。お前、その姿で2リットルのポカリ、一気飲みできるか?』
『はあ?』
奴は、おかしなことを言い出した。
『二足歩行はいいや、お前もしてるみたいだし。じゃあ1トン近くのブロックを両手で抱えて、ジャーマン・スープレックス出来るか?』
小リスの……ジャーマン・スープレックス?