シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
さらに奴は続けた。
『伸びに伸びきった頬袋と腹袋を、パラシュートのように膨らませて、ムササビみたいに見事な飛行術で、綺麗に着地できるか』
想像……不可能。
煌はどうしてしまったんだ?
ふるふると震えた小リスは、煌の掌を飛び跳ね――……
『そんなことができるのは、化け物だ!! 僕を馬鹿にしているのか!?』
煌の顎に頭突きを食らわし、更には体を捻らせて、回した足で煌の首の皮膚をひっかいた。
……頭突きはあたしの専門だけれど、連続技を見ていればあれはいつもの玲くんで…しかも現実世界ではありえない"足の短さ"のために狙った位置に届かず、ひっかき傷だけで留めてしまったみたいだ。
「あの馬鹿蜜柑……。あの腐れた頭、ショートを通り越してぶっ壊れたのか……? まあ、時間の問題とは思っていたが……」
桜ちゃんが、哀れんだ顔をして呟いた。
そんな視線を受けているのを知らず、煌は至って真面目くさった顔で小リスに語る。
『玲、俺達はそれ以上のインパクトがなければ、驚けない体にさせられちまったんだよ。文句ならチビに言えよ。しかも"サンダーボルトアタック"は既出で、奥義の上を行く究極奥義を更に進化させたセカンドなんていう奥義は炸裂済みだ』
……な·ん·で·す·と!?
煌は、もっと凄そうなのを知っていたらしい。
『ちょっと待てよ!! この奥義は初めて僕が披露するものなんだぞ!? これは朱貴との特訓で編み出して、紫茉ちゃんと命名したんだ。どうしてこのリスがそれより前に、この名前でお前に披露するんだよ』
『俺に怒るなって!!』
『怒りたくなるだろう!? 僕は今まで温めにいいだけ温めて……初めて披露したんだぞ!? きっとお前なら凄く悦んで感動するかなと思って。芹霞より前に、僕……お前への労(ねぎら)いを兼ねて、初めて……』
「あ…師匠がしょげちゃった……」
「ああ、玲くんの尻尾と耳……垂れちゃった……」
そんな時だ、苛立たしげに朱貴が舌打ちしたのは。
「玲……。早く気づけ!!」
その声に反応したかどうかはわからない。
小リスが煌と共に上を向いた。
『……ふうん…?』
今度は、玲くんの冷ややかな声が聞こえてくる。
『あれだけ食らって、それでも平気なんだ? 直撃後、お前達の力の放出を休憩させるため、念のため電気の檻に閉じ込めて、かなりの高電圧を流し続けていたんだけどね。
顔は爛れて凄いことになってるけど、効いているともいいがたいな。消せば罠が作動するかもしれないから、あれを力尽くで押さえればコトはすんなりいくかなと思ったけど、そうでもないらしいね。作戦変更をしないといけない』
『普通じゃねぇな、あれ。チビサクラには、無効の力でも備わっているのか?』
好戦的に目を輝かせ、煌が言った時だった。
小リス玲くんの目が大きく見開いたのと、あたしが"それ"に気づいたのは。