シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『サンダーボルトアタック』
紫茉ちゃんと名付けた、少々仰々しい名前のようにも思えなくもない…その奥義は、現在における僕の力の……強さの集大成であり、僕の切り札的存在だった。
強くなりたい。
皆に認められたい。
そんな僕の思いが具現化し、今までの限界を突破をした結果でもある。
少なくとも僕の中での"奥義"の位置づけはそうで、これが早くに身についていたならば、由香ちゃんと対戦したあのゲームの中で、対戦相手たる"ゆんゆん"の奥義の連続技に、逃げる以外の対処が出来ていただろう。
ただ僕達の住まう表世界で、奥義を使用するのは不安もあった。
それは僕の心臓が、大きな力の放出に、長時間…あるいは何度も耐えられるか。
短期決戦でいかない場合、そう何度も易々と奥義を出せるものではない。
これは一撃必殺なんだ。
奥義を今まで見せずにいたのは、それを使うような状況ではなかったから。
なんとか皆の力で乗り切れたから。
だけど、櫂と煌がいる世界で、彼らの多大な力をもってしてもまだ破れぬ術ならば、僕だって力の出し惜しみをするわけにはいかない。
今こそが、奥義発動のタイミングなのだと――
今こそが、今の僕の成長を見せるタイミングなのだと――
……全員の驚く顔をみたいとほくそ笑みながら、自信もって発動させた僕の奥義。
内心、こんな小さな体が奥義に耐えられるか不安を覚えたけれど、手応えはあった。
奥義披露に喜んでいたのは僕だけで――。
――あ……うん。
いつもど派手な装飾に惑わされ、かなり怪しげなものを簡単に買い込んで、目をキラキラさせて自慢してくる単純な煌ですら、意味不明なたとえを引き合いに出してまるで驚いておらず。
煌が立ったまま夢でも見て寝惚けているのだとしても、僕の奥義は目覚めさせるほどにもなっていないのは確かで。
インパクトがない……らしい。
しかもそれ以上のことを、このリスはやってのけていたらしい。
人としての、僕の矜持は傷つけられ、消沈してしまった。
その上――
周涅操る裏切り者が、僕の奥義を弾いたことを知る。
しかしその事実は、僕をさらに落ち込ませるものではなく――
逆に、僕の闘争本能に火をつけるものだった。
確かに僕は、奥義に全力を尽くしてはいない。
翠の顔をしたあの気色悪い桜もどきを消すのではなく、捕らえることが目的だったからだ。
今はただ――
力を出し続ける櫂と煌を休ませてやりたくて。
僕が来たからと、少しでも安心させたくて。
力加減をしたとはいえ、奥義は周涅の枷にもならず、あくまで周涅が僕の上にいると主張するのなら、僕はそれを超えるまで。
ハードルが高くても、それを飛び越えればいい。
ここには、櫂も煌もいる。
体がどうであろうと、また共に戦える嬉しさに、僕の好戦的な血がふつふつと目覚める。
ああ、僕は…こんなにも彼らに会いたかったんだ。