シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
神妙に煌は言った。
「お前の体内からポイポイ出て来る鉄の胡桃、お前の体のどこにしまってあるんだ? チビに聞いても教えてくれなくてよ。ひとつ何キロもするあれを何十個も、どこに?」
「……」
「やっぱ、お前のほっぺ? このリス、元々は下膨れほっぺでさ――」
下膨れほっぺ……。
リス……。
「ふふふ……。こんな時、なにかと思ったら……」
僕は冷たく笑って――
「それは僕の禁句だ、馬鹿犬!!!」
飛びはねると、煌の腕に噛み付いた。
「イテテテテテ! 玲、そんなにカリカリするな!!」
「禁句なんだから怒りたくなるだろ!?」
「そのカリカリじゃねえよ、リスの習性…胡桃カリカリだ!!」
「なにが胡桃カリカリさ、僕はリスじゃないって!! 大体、体から出て来る鉄の胡桃とか……寝惚けるんじゃないよ、そんな寝言に僕が答えられるわけないだろう!!」
「うわわ、この凶暴リ……。イテテ、わかった、わかった!! お前はリスであってもリスじゃねえ!! イテテテ。玲、話を……痛いんだって、とりあえず、離れろっ!!」
煌が騒いで僕を空に投げ飛ばした。
………。
空高く、更に高く。
皆を遙か下に見下ろして、僕はまだまだ飛んで行く。
………。
なんだろう、この快感。
笑いたくなってくる。
しかしそれを理性が押し止め、現実に……我に返った。
それは丁度落下を始めたところ。
「煌、そこから見てろよ、このリスに出来たのなら、僕だって!!
究極奥義――」
僕の伸ばした両手に呼応するように、空が暗くなる。
もう落下しているけれど、名付けてこれは――。
「ジャンピングサンダー……」
「玲、ジャンピングサンダーボルトはセコンドまでは使用済みだからな!! ちなみに、それは俺が命名した!!」
――くっ。野生の動物め!!
「玲、気をつけろ!!」
櫂の声にはっとすれば、僕に迫るように急昇してくるものがある。
それは――
爛れた翠の顔を持つ、桜もどき。
「僕を……消すつもり?」
技の名の代わりに出たのは、嘲りの言葉。
「無効でもさ、出来ると思う? 僕はひとりじゃないのに?」
僕ひとりの力なら抑えられると踏んでいるのなら、完全に周涅の見誤りだ。
この世界は、生きている櫂と煌がいるんだ。
だったら、こんな状態は――。
「ふたりが黙って見ているはずはないんだよ!! 行け、究極合体奥義!!」
そう。
下から迫り来るのは、黒色と赤色の光。
「ジャンピングサンダーボルト~」
それは櫂と煌の力だ。
「「ダークファイアアアアア!!」」
……煌の声と重なってしまって。
僕のネーミングセンスは、所詮犬止まりかと嘆かわしくも思うけれど。
「with MONKEY!!」
その時、予想外の声もしたと思ったら、真剣な顔をした翠で。
落下始めている僕を支えに来てくれたようだ。
翠の掌の上、僕は墜落は免れた。
だから言えない。
自虐ネタはよせ、なんて。