シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
桜もどきから力が放たれ、僕が放つ力とぶつかりあった。
僕の力が押し返される感覚がある。
あんな姿でも、周涅の力ということなのだろうか。
僕より上なのだと、あの男は表世界では高笑いでもしているのだろうか。
「させやしないよ!!」
安定した足場を得た僕は、もてる力を解放する。
周涅の術を破るために、皆の力になるために僕は此処に来たんだ。
皆と共に戦うために。
皆と共に生きるために。
例えリスの体が吹き飛ばされそうと、今ここで必要なのは確かな力。
皆を守るための突破口。
ああ、その思いは櫂も煌も…翠も一緒か。
そしてこのリスも消えた式神も。
ここからは見えにくい、他の…櫂達と共に戦った仲間も。
生きるために。
笑うために。
そのために強くなりたかったのは、きっと誰も同じこと。
「行けえええええええええ!!!」
どんな障壁も吹き飛ばしてやる。
空からの雷と僕が持ち得る電気の力。
それらが混ざり合い、白い光となる。
そしてそれは、櫂の黒い闇の力と煌の赤い炎の力と合流すると、互いに勢いを増して、桜もどきの力をぐぐっと大きく押し返す。
櫂も煌も思い出しているだろう。
かつての"約束の地(カナン)"で力を合わせた時のこと。
僕達は、出来ないことはないのだと思えた、あの爽快感に浸っているかい?
「!!!?」
その時だった。
桜もどきが両手を広げて、一身に僕達の力を浴びたんだ。
抵抗ではなく、すべてをうけいれているかのように。
それは自暴自棄の自殺行為にも見えたけれど、
「無効化しようとしているのか!?」
ああ、なんてことだ。
無効化出来ねば、僕達の力が勝り、恐らくこの桜もどきは消える。
つまり僕達にしてみれば、どちらに転んでも事態は悪くなる。
どうする、どうすればいい?
どうすればこの桜もどきを生かしたまま、術だけを破れる?
「帰ってこい、吉祥ちゃん!!」
そんな時、翠が叫んだ。
翠から放たれた……深みのある緑色の光が、桜もどきを覆う。
それは僕達の力に相反するものではなく、僕達の力に抵抗させないための、拘束の力だ。
翠は桜もどきを拘束したまま、僕達の力の軌道からそらせようとしている。
そう、障害が軌道上にいなければ、僕達の力は術破りにすぐ地面に向かう。
その間の拘束だけでいい。
「ゴボウちゃんのように……剣鎧のように、消えるんじゃない!!!
吉祥ちゃんは俺の式神だ、主は……消すために式神を生んだわけじゃない!!」
どうしても式神を消したくないらしい翠が叫ぶと同時に、
「!!!!」
桜もどきは、翠の拘束の力を体に纏わせたまま、僕達が放つすべての光を――
「吉祥ちゃん!!!」
真下の白いスクリーンの、九星の陣に落としたんだ。
両手で押し込むように。