シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


――サンダーボルトアターーック!!


あまりに馴染みすぎてしまった単語と術を、なぜ玲が知れてわざわざ使用したのか…(多分、レイの意識とリンクしているのだろうが)、すぐにでも実行できる玲はやはり玲だと感嘆したり。

大きな尻尾を揺らして思案する顔も可愛らしく、直ぐにでも抱きしめて手で撫でて再会を喜びたい気持ちを抑えつつ…(煌が頭に乗せたり顔に尻尾をぱたぱたされてるのは羨ましく思ったり…)、そんな俺の前で、ふさふさの尻尾を揺らした勇ましい我が従兄は、俺達を救済するために奮闘する。


煌の力の俺の力と、そして玲の力と。

力を合わせれば見えてくる。


レイではない、玲の輪郭が。

いや、レイにも連なる玲の本質。


俺達を信じて、それに同調してくるのはいつもの如く。

ならば俺達は玲の可能性を信じるだけ。


途中、冷や冷やした場面はあったけれど、結果的には…レイが敷いた鉄の胡桃に沿い、翠の想いに感応した本当の吉祥の真心が、九星の陣を破る。


力ではなく、心で式神を制した翠。

結果的には、俺が選んだ方法ではなく…自らの意志にて翠は式神を制したことになる。


裏世界の者達を平定するために、俺は力ではなく心で繋がりを求めようとしたことを思い出す。


「俺も…まだまだだ」


潜在的にこびりついている暴力観念。

それは力で圧倒できるという優越感があるからだ。


それではだめだ。

相手が人間だろうがなかろうが、力は手段であって、結果になってはいけない。


協力を求めるならば尚更に。

相手を…選んではいけない。


それが翠によって気づかせられたことが、悔しくもあり、嬉しくもあり…。


消えて行くスクリーン。


これで終わった――

――はずだったのに。



地面が揺れた。

この揺れは覚えがある。


まさか、この世界まで爆破されるのか。



「九星の陣は……フェイク!!?」


爆破を成功させるための、カモフラージュだとでも!?

俺達の気が術破りにそれていた時、爆破に向けてなにかが動いていたのか!?



そんな時、翠の声が宙から響いた。


「皆、ひとつに集まって!! 吉祥ちゃんの結界の中に!!」


目映い光の発光源は、やはり宙に浮かぶ…桜そのもののような式神。

どうしても吉祥は、桜に似せないといけないのだろうか。


そう疑問に思いながらも、翠の指示した方向に移動し始めれば…




「櫂――っ!!」



煌の前を四つ足で駆けてくるのは、玲。


「玲、お前なんで四つ足よ。そりゃあリスは普通かも知れねえけど、リスじゃないって言い張るのなら、二本足で駆けろよ。どうして鍛錬してる俺より早く走れるよ、やっぱお前はリスの神様……」


煌がぶつぶつ言いながら、その後を追いかけてくる。

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