シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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「色々話したいこともあるけれど、その前にこれを置こうかね? ほっ!! よっこらせ~ッッ!!」


ドッシーン。


由香ちゃんが…背負っていた風呂敷の包みを床に置いたら、少しだけ…部屋が震えたように思う。


どれだけの重さなんだろう?

少し持ち上げてみた。


「~~ッッッ!!!」


びくともしない。

両手で全力でも微塵も動かない。


「ああ、ほら神崎、無理しない。腰痛めるぞ?」


負けるもんか~ッッ!!!

しかし背筋に異常負荷がかかり、更には勢い余って後ろ向きにすてんと転んでしまう…のを、素早く動いた玲くんの身体で受け止めて貰った。


「何でこんな重いのを、由香ちゃん持って歩けるの!!? どう考えても由香ちゃん、あたしより体重なさそうだし、煌みたいに鍛えているわけじゃないし…。あたしだって緋狭姉と酒盛りして酔っ払ったこの巨大ワンコを、部屋まで連れ帰ってるから、人より手足は強い筈なのに」


「ああ、ボクはチビッ子でも、毎回コミケで慣れているからね。山の同人誌、限定レアものフィギアや置物…帰る頃は、そりゃあ凄まじい量だから、オレンジワンコ1匹くらいの重さなんて可愛いものさ。あれで腕足腰を鍛えられているんだ。コミケ様々だよ」


「玲様…馬鹿蜜柑を超越する"こみけ"って何でしょう?」

「うん? 由香ちゃんが常時"むふふふ"となる…由香ちゃんにとっては、人生に潤いをもたらす程の神聖なる(妄想の)神の祭典だろうね。しかしどれくらい仕入れてるんだろう、由香ちゃん…」

「もうそろそろ季節だな~、むふふふふふ~」


由香ちゃんを"むふふ"させて鍛錬させる"こみけ"、恐るべし。


そして――

由香ちゃんの口から、"約束の地(カナン)"が爆破されてから以降の詳細が明らかになった。


奇跡的に怪我人なし。


久遠達の命を支える魔方陣も、あれだけ衝撃を受けても無事だったらしい。

それだけでどんなにあたしの心は躍っただろう。


玲くんの言った通り、あの爆破も皆は事前に判っていたことらしかった。


願望でも信念でもなく、現実に皆が生きている。

それだけで心が震えて、また泣いてしまった。


慰めてくれている玲くんの声も歓喜に少し涙声になっていたのは、知らないフリしておこうと思う。



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