シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
俺の目に飛び込むのは硝子の塔。
この世界を象徴する硝子の塔。
夢路と緑皇と、玲の父親がいるはずの塔。
あの塔は、裏世界の防御を担い、地下には魔方陣が眠っている。
この世界が揺れているのは、連続的な爆発によってだろう。
だがそれが決定的にならないのは、約束の地(カナン)にはなかった"防御壁(シールド)"があるからだと思う。
それこそが、硝子の塔にて…クマが玲の父親と共にしている成果なのだろう。
だがそれは、時間の問題だ。
感覚を信じるのならば、いずれ大きいのがくる。
約束の地(カナン)を爆破したのと同等か、それ以上の…。
裏世界と約束の地(カナン)。
爆破がおきた約束の地(カナン)から、俺達を護ったのは緋狭さんのおかげでもある。
それが五皇の力だというのなら、緑皇もまた、破壊の防ぐ術とはなる。
実際、それを想定しているから硝子の塔に残ったのかもしれない。
約束の地(カナン)の惨劇がまた繰り返されるのか。
人を変え、土地を変え…なぜ生きている者達を殺さねばならないのか。
約束の地(カナン)では久涅が、この裏世界では周涅が世界の爆破に一役買っているというのなら。
ふたりの思惑はどこかで交差し、多くを犠牲にしてまでも成さねばならないことなのか。
「周涅の術は破ったはずなのに…!!」
凶々しいスクリーンは消えたじゃないか。
それなのにどうして裏世界が破壊されるんだ。
どうして俺は、ここまでの破壊の進行を食い止められなかった!?
どうしてここまでの事態を赦していた!?
悔しさのあまりに俺が呟けば、
「櫂、もしかして…久涅が来ているかもしれない」
玲の声が耳もとで聞こえる。
「これは…また、久涅の仕業かもしれない」
久涅と周涅が共謀していると考えれば――
2つの世界の爆破はなにが狙いだ?
違う世界で、共通して繋がるのは俺達。
約束の地(カナン)において、親父公認のもと久涅が実行犯となったのなら。
これもまた、俺達を狙っての爆発だと?
俺達が来たから裏世界は――。
俺達が…俺が全ての元凶だと!?
「冗談じゃねぇ!!」
俺の心を代弁したのは煌だった。
「約束の地(カナン)においても切り抜けるのは間一髪だったんだ。こっちの世界に、氷皇が抜け道用意してくれてるわけねえだろう。小猿、桜モドキの結界は裏世界の爆発に耐えられるか?」
「うう…俺、自信ない…けど、この人数ならやってみないとなんとも…」
俺は翠を見つめた。
「翠、救うのは俺達だけじゃない。裏世界の住人全部だ」
「ふへ?」
翠から血の気が引いた。