シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「櫂、ぐだぐだ考えている暇はない。助けないといけない人数が多いのなら、手分けして行こう。僕は塔に行く。ええと…そこの」
「私かい? 睦月だよ」
「そう、君…睦月。塔の鐘を鳴らせるのなら、僕と一緒に。翠も僕と来て。君は睦月の誘導によって出た他の人達を、この余震からも護るために吉祥や式神を使役して貰いたい。余力があれば、塔にが危険にさらされた時、手助けしてくれ。いいか、大役だぞ? 人の命がかかっているんだ」
「う、うん…。頑張るよ。タマキ達は一度戻して、回復させている。今は吉祥ちゃんの力を強めるから」
「よし、じゃあそっちは頼んだ。このままだと、この虚数の侵攻具合からすれば、塔が虚数の塔に成り果てるまで15分が勝負だ。僕は15分を目一杯長引かせて爆破を食い止めれるだけの防御を強化するから、翠は万が一に備えて他の人達を結界で守り、櫂と煌は…」
「まずは緋狭姉のとこに行くのと…」
「爆破の原因を突き止めて対処する」
俺と煌は頷いた。
「玲、連絡はニノを使おう。翠を通して…」
「櫂、なんで"ニノ"?」
「ああ、本人がそう名乗ったからさ」
「ふうん…? なんでそんな名前なんだろう……?」
玲は首を傾げながら、ぴょこんと翠の肩に飛び乗った。
そして俺達は別れた。
「櫂、とりあえずは森だな…」
「ああ…。煌、お前の勘では…緋狭さんの守護、簡単に行くと思うか?」
「……思わねえな。嫌な予感がする。そんな簡単に見つけられて、助け出せるのなら…こんな危険事態にも、緋狭姉がとっ捕ったままじゃねえだろ。どんな理由があったにせよ、緋狭姉はされるがままの拘束プレイに喜んでいるドMじゃねえぞ? むしろドSだぞ!? 俺が拘束されているならまだわかるがよ」
………。
煌の身体には、長年培われたM精神がすり込まれているのだろうか。
可哀相に、それが現実と納得している煌の無意識さが痛々しい。
しかしそれは言わないでおこう…。
揺れる大地を俺達は走る。
スクリーンが消えた後の土地は、荒野と成り果て…どこまでも痩せた大地が拡がっていた。
スクリーンは、裏世界の精気を吸収していたのだろうか。
「なんだかよ、本当にあるのか、森」
「エレベータから見たらあったんだから、存在はするはず…」
どこまでも、視界の果てにあるのは荒野の地平線。
次の舞台の景色は見えてこない。
「スクリーンが消しちまったりしてねえよな、森…」
そんな呟きに、俺は言った。
「冗談じゃない!! 知らずに緋狭さんが消されてたまるか!!」
ゴォォォォ。
「……櫂、なんの音だ? 爆発…とも違うよな」
ゴォォォォ。
「煌、あれを見てみろ…」
俺が指を差した遠くには――
大きな竜巻。
「……櫂」
「ああ、これはやばいな」
大地を揺るがす震動とは別に、大地を抉り取るようなそんな轟音が相乗して、俺達に警鐘を鳴らす。
「砂嵐…じゃねえか?」
この世界の住人が恐れて避難する災害が、俺達の近くまで来ている音がした。
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藤宮より
父の急逝に伴い、長らく更新をお休みしてすみませんでした。
ようやく環境が落ち着いてきましたので、少しずつ更新をしていけたらと思います。
今後ともよろしくお願い致します。
2013.12.13