シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


ゴォォォ。


激しくなる風が、地面の砂を巻き上げ、更に視界が悪くなる。

風の抵抗を、俺は力によって押し殺して煌と進むが、俺の力をもってしても風圧が強すぎる。


それでも、まだ嵐の…竜巻の"目"には程遠いだろう。

今からこんなものでは、中心部が近付いてくればどうなるのか。

それでも、俺の力と煌の力とで乗り切らねばならない。


「なあ、このだだっ広い景色のどこに緋狭姉がいるんだよ。しかも視界悪くて目を開けてられねぇ!!」

「目はあてにならないか。だったら、お前の鼻は…」

「櫂、俺は捜索犬じゃねぇんだって!! あぁ、こういう時、玲…本当の動物が居れば…」


ゴォォォ。


「おいおい、待てよ。竜巻…威力を強めて、動きがゆっくりになりはじめたぞ!? なんだよ、通過するならさっさといけよ、この野郎!!」


叫んだ煌が咳き込んだ。


「森があった付近に…まさか停滞するとか?」


嫌な予感だが…胸騒ぎがする。

もしも、竜巻の中心部に緋狭さんが巻き込まれてしまったら。

ああ、その前に俺達は緋狭さんを守りたいのに。


力を。

竜巻を消せないのなら、せめて押し返すだけの力を。

これ以上進行してきたら、緋狭さんも…変わりつつある硝子の塔にもどんな影響があるか。



「煌……俺が食い止めるから、お前は緋狭さんを……」

「馬鹿言うな、櫂!! お前手の血管切れているじゃねえか!! さっきから立て続けに力使い続けているんだから、お前の体に負担が……」

「増幅の力を使う暇があるのなら、一刻も早く緋狭さんを……」

「お前を置いて行けるかよ!!」



『………う』



「緋狭さんを優先しろ、煌!! このままでは共倒れになるぞ!? 俺達は緋狭さんを守るだけが目的では無いんだ、まだすべきことがあるんだ!!」

「わかってるよ、んなことは!! だけど俺は……!!」

「煌、今ここでもめている時間が勿体ない、早く――」



『……せよ』



………。


なんの…音だ?




『返……よ、……う』



これは……声?

緋狭さん……の?


「おい、どうした、櫂。きょろきょろと」

「…今、緋狭さんの声が聞こえなかったか?」

「は?」


ゴォォォ。


「緋狭姉の姿なんかねぇし、俺には聞こえねぇぞ、嵐の音がすごくて……あ?」

「聞こえたか?」

「………。まじか? どこにいる?」

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