シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

別視 桜Side

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ぷつんと、映像が途切れたのは、術者の異変を物語る。


玲様がリスになられて、櫂様達と共に周涅の術を破った手応えはあった。

音声を無くした映像から続きを想像すれば、周涅が手中に収めていたはずの皇城翠の式神が、玲様と櫂様、そして煌の力を合体させた力を導き、偽りの主…周涅に返したのだろう。


いわゆるそれは、呪詛返し。



その瞬間、映像は消え――


――あああああああ!!


突如雄叫びを上げた周涅の全身から、血が迸(ほとばし)ったんだ。


それはまるで周涅の許容量以上のものを与えられ、内側から爆発するかのように。

だが肉体が砕け散らなかったのは、流石だと言うべきなのか…周涅は血だらけの体のまま、その場にがくんと膝をつき、頭を垂らしたまま動かなくなった。

そしてゆらりと大きく体が揺れて床に崩れ落ちると思った途端、七瀬紫茉がさっと動き…周涅の体を両手に抱えた。


「周涅、周涅!?」


七瀬紫茉が声をかけても、周涅は目覚めない。

その体から、噴き出る血の流れは止まらない。


このままだと、死んでしまうだろう。


それを予感し、困惑と苦痛の表情を顔に浮かべた七瀬紫茉。

その目から、やりきれないというような苦渋の涙が頬に伝え落ちる。


「周涅は――」


静かに歩み寄ったのは、朱貴。


「周涅は、かろうじて生きている。どうする?」


どこまでも表情を隠した冷ややかな面持ちで、どうしていいかわからずに、ただ兄の血だらけの体を抱く妹に声をかける。


七瀬紫茉はくっと唇を噛みしめ、そして芹霞さんと由香さんと私、そして玲様を見た。


"どうする?"


生かしたいのか、殺したいのか。

その判断を七瀬紫茉に委ねているとしたら、それは彼女にとって酷な話。


彼女は、兄を赦さないと憤怒の感情を抱いて、敵対したのは事実。

だが殺したいとまで、願っているのだろうか。


そして朱貴を思えば、あそこまで周涅にしたいようにされ続けて、殺される寸前まで虐げられてきたのは、なにも今だけに限ったことではないはずだ。

どんな理由があったにしても、周涅の奴隷のように扱われた立場を甘んじてきた朱貴にとって、周涅のこの無防備な姿は、積年の恨みを晴らせるチャンスでもある。


復讐のチャンス。


"どうする?"


この場にいる人間達の中、凄まじい力を持つのは朱貴だ。

強者である朱貴は、自らの選択権を放棄して、あくまでその妹に尋ねる。


「紫茉、お前は周涅をどうしたい?」


七瀬紫茉の意向ひとつで、周涅への憎悪を押し殺せるのか。

そこまで、自分の心を犠牲に出来るものなのか。


七瀬紫茉は、芹霞さんを見て、震える唇を開いた。


「あたしは――「紫茉ちゃん」


芹霞さんが静かに言った。


「紫茉ちゃんはどうしたいの?」
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