シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
譲歩 煌Side
煌Side
********************
「お前は榊ではなく――
久涅、か?」
黄色い外套男に向けて、突如櫂がそう言った。
強張ったその顔で。
「おい、櫂!!? 久涅って…こいつはどう見ても…」
「砂嵐を消したことといい、なによりこの気は――久涅のものだ」
俺の言葉を打ち消すように、不気味な程に抑えられた声。
櫂はなにを言っている?
目の前には、不穏な黄色。
榊といい、芹霞といい――
全てはこいつが現れて、事態はおかしくなった。
芹霞と玲と七瀬だけが見える黄色の蝶が飛べば、傍らにはこいつもいる。
そして俺は、この格好で人の首を刎ねていたという。
俺達が目にする外套男の正体――
櫂の口から、榊という名前が出て来るのも驚いたが、更には続けて口にした名前。
黒皇だという久涅が、
櫂を殺そうとしたあの久涅が――
「ほう、気づいたか、坊」
緋狭姉が許容する、"協力者"!!?
「ありえねぇ…ありえねぇって!!」
耐えきれず俺は怒鳴った。
久涅が櫂に協力するってことも、
久涅が黄色い外套男だったということも。
「なんで、よりによって久涅!!?」
一番、外套男の正体としてしっくりこない奴じゃねえか。
「この正体が仮に久涅としても、元々緋狭姉、久涅に対して傅(かしず)いて、俺達に敵対したんじゃねえか。まさか、最初から俺達騙して密かに手を結んでいたって!?
まだ、黄色繋がりしてる…黄皇だという小猿の兄貴だといわれた方がしっくりくるよ。久涅だなんて、緋狭姉がニャンコに生まれ変わったということなみに、信じられるわけねぇよ!!」
「――煌」
白ネコが俺を見た。
その目が、ますます真っ赤になったかと思うと、
「私は死んでいないと言っているだろうが!!」
研ぎ澄まされた爪が、鎌鼬(かまいたち)化して俺の服を裂く。
やべ…緋狭姉、ブチ切れてる!?
ほとんど反射的な逃げの姿勢になっている中でも、俺の本能は感じている。
風使いの櫂でも消せない砂嵐を消せたこと。
櫂の言う通り、自らの気配を"無効"化できる、その特異な気配。
それは紫堂久涅のもつ特有のものだ。
もうなにがなんだかよくわからねえ。
久涅ではないと否定できる証拠が、なさすぎて。
********************
「お前は榊ではなく――
久涅、か?」
黄色い外套男に向けて、突如櫂がそう言った。
強張ったその顔で。
「おい、櫂!!? 久涅って…こいつはどう見ても…」
「砂嵐を消したことといい、なによりこの気は――久涅のものだ」
俺の言葉を打ち消すように、不気味な程に抑えられた声。
櫂はなにを言っている?
目の前には、不穏な黄色。
榊といい、芹霞といい――
全てはこいつが現れて、事態はおかしくなった。
芹霞と玲と七瀬だけが見える黄色の蝶が飛べば、傍らにはこいつもいる。
そして俺は、この格好で人の首を刎ねていたという。
俺達が目にする外套男の正体――
櫂の口から、榊という名前が出て来るのも驚いたが、更には続けて口にした名前。
黒皇だという久涅が、
櫂を殺そうとしたあの久涅が――
「ほう、気づいたか、坊」
緋狭姉が許容する、"協力者"!!?
「ありえねぇ…ありえねぇって!!」
耐えきれず俺は怒鳴った。
久涅が櫂に協力するってことも、
久涅が黄色い外套男だったということも。
「なんで、よりによって久涅!!?」
一番、外套男の正体としてしっくりこない奴じゃねえか。
「この正体が仮に久涅としても、元々緋狭姉、久涅に対して傅(かしず)いて、俺達に敵対したんじゃねえか。まさか、最初から俺達騙して密かに手を結んでいたって!?
まだ、黄色繋がりしてる…黄皇だという小猿の兄貴だといわれた方がしっくりくるよ。久涅だなんて、緋狭姉がニャンコに生まれ変わったということなみに、信じられるわけねぇよ!!」
「――煌」
白ネコが俺を見た。
その目が、ますます真っ赤になったかと思うと、
「私は死んでいないと言っているだろうが!!」
研ぎ澄まされた爪が、鎌鼬(かまいたち)化して俺の服を裂く。
やべ…緋狭姉、ブチ切れてる!?
ほとんど反射的な逃げの姿勢になっている中でも、俺の本能は感じている。
風使いの櫂でも消せない砂嵐を消せたこと。
櫂の言う通り、自らの気配を"無効"化できる、その特異な気配。
それは紫堂久涅のもつ特有のものだ。
もうなにがなんだかよくわからねえ。
久涅ではないと否定できる証拠が、なさすぎて。