シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


緋狭姉によれば、この世は俺達が住んでいる表世界、今いる裏世界、そして電脳世界のの3つに分かれているという。

3つの世界は無関係そうに見えて、互いの弱点を補っているような、友好的関係だという。

表世界は人間という個体の集合場所であり、秩序を保つために定義とも言うべき"規範(ルール)"がある。

そうしたうざいほどのルールで縛り付けられた表世界に抵抗した者、あるいは規格外として、"社会のつまはじきもの"として見捨てられた者達の救済場所になっているのが裏世界だ。

裏世界は、表世界のルールに囚われないモノが集う場所であり、それは制約だらけの肉体の限界を超えた共通場所…潜在意識だとかいう心に在する"思念"の世界らしい。


だから玲の言葉をしゃべるだけではなく、不可解すぎる生態を持つリスだとか、俺達の記憶に沿った場面を非常識に構成できるとか、こけし達がおかしな化け物を出現させたり、風景を切り替えたりできたりと、夢にも似た"何でもあり"が可能らしい。


――何でもありと言うならば、久遠ニャンコはどうなんだ? 表ではそのペアで動いていたんだろう? それは何でもありにはならねえのか?

――表世界の久遠の意識がこのネコの肉体に宿れたのは、裏世界にいた私という特殊な媒介がいたからだ。それでも表世界の制約に囚われ、久遠とて人の言葉は話せなかった。


自分同様、久遠をも評価しているらしい緋狭姉の言葉。


――久遠はともかく、緋狭姉はこの世界にいてもいなくても、常識を超えた恐ろしい化け物だからな…。今はハゲネコか。

――この見事なふさふさを見て、ハゲネコとはなんだ、ハゲネコとは!!


どうやら緋狭姉は芹霞同様、ふさふさが自慢で…しかも自分のハゲは見えないらしい。

正直者の俺は、勿論…フルボッコ。


誰だよ、緋狭姉にハゲを作った奴。

緋狭姉に悟られないのなんて、絶対そんなの人間じゃねぇって。


――まったく、お前の馬鹿げた戯言のせいで話が脱線したではないか。


ハゲは、馬鹿げた戯言じゃねぇんだけど。

そう櫂を見れば、櫂はぎこちなく笑って俺から目をそらしやがった。


正直者は馬鹿を見る。
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