シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
滔々としゃべるニャンコ。
俺用に翻訳してくれる櫂のおかげで、またなんとか続く話の輪郭が見えてくる。
実際"荒んだ者達"大勢が同じ裏世界に住む以上、世界として存続させるには"人間同士殺し合わない"、"人間同士食い合わない"だとか、人間にとっての常識以外に、新たに定義めいた秩序が必要なわけで、それを"妖蛆の秘密"として持ち込んだのが、表世界から来た久涅やレグの怪しい知り合いらしく、現在、ここの住人全員が納得の元、櫂にもある黒き薔薇の刻印…"ブラックローズ"をつけたこけしがこの世界をまとめるようになった。
今まで無秩序故に混沌としていた裏世界は、表世界の最低限の"定義(ルール)"の介入により、存亡の危機は免れているといったわけだ。
裏世界には、表世界における肉体の有無は必要ないらしいが、精神世界に肉体を持ち込むには、それを維持出来る程の…心身共に剛健な五皇並の相当な力が必要らしく、裏世界から戻るには相応の対価が必要であり…そのひとつがあの黄色い格好だ。
――なんであの格好?
――……今は省略。次、電脳世界の話に行くぞ。
――はああああ!? そこ、肝心だろうが!!
電脳世界は、いつか滅ぶ…制約ある肉体が集う表世界と、心さえ揺るがねば生き続けられる裏世界を足したようなものだという。
よりSFチックに進化続ける表世界、なんだかレトロで古くさい裏世界。
歴史の上でも表世界の進化は、電気のおかげで驚異的に飛躍したというのなら、電気こそが神様のようなもの。
そして表世界では治療出来ない者達も、裏世界で玲の親父によっていくらかの電脳世界の力を利用することにより、難治療も可能になった。
たかが電気、されど電気。
俺が触れねえ電気の世界は思い切り未知数で、多大なる力を秘めている。
ただ触ればびりびりくるだけのものではねえらしい。
そしてなにより――、
電脳世界の…電気の力は、表世界も裏世界も脅威の"虚数"に転じられる。
"約束の地(カナン)"をも爆破できる虚数。
俺と小猿の耳がキンキンさせた、黒い塔から放たれる…0と1以外のもの。
表世界からも裏世界からも、電気の力が全てなくなり、全てが虚数となってしまったら…人間はどうなるのだろう。
玲だって言ってたろう?
電脳世界は、人間がどうこうできない偉大なる存在だと。
あれはあながち、ただのオタク発言ではなかったらしい。