シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
だけど――。
「…お前の気になるところはそこか、たわけ!!」
十分、気になっていい部分だと思うけれど。
助けを求めた櫂は、眉間に皺を寄せた顔で考え込んでいた。
「シカトすんなよ、櫂、櫂!!」
そんな時、塔から鐘の音がした。
「牛女、ちゃんとやってるみたいだな」
けたたましくなる鐘の音。
「しかし、ずいぶんと荒くうるせえ鳴らし方だな。いつもこんな合図なのか?」
「違う――」
その時、塔を見つめて足を止めていた櫂がつぶやいた。
「あれは、集合の合図ではない。
"逃げろ"の合図だ」
「はああああ!?」
「緋狭さん、塔の横の空間に……無数の亀裂が!!」
「ああ…やばいな。あそこも空間が裂けたのか。クロを呼び戻すか」
どうやって久涅を呼び戻すのか、そんなことより事態の見えねえ俺は、なにが起きているのかが気になって。
見えねえんだよ、"亀裂"とやらが。
「どういうことよ!!?」
「偃月刀で見よ、煌」
やけに冷静な緋狭姉に急かされ、偃月刀にその光景を映して見れば――
「うわっ、黄色い蝶!!?
玲、小猿…こけし達、無事か!!?」
「ニャアアアアアン!!」
鐘の音に負けじと、やけに響く緋狭姉の鳴き声に背中を押されるようにして、俺達は全速力で、塔に向かって走った。