シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「今の声……"白き稲妻"!!?」

「違う、あのおかしなリスだ。リスになにがわかる。放って置け」


そりゃあ僕はリスだけれど。

人間の姿でもリスの姿でも無視されたことに、カチンと来てしまった。


「ちょっと三沢さん。キーボード貸して!!」


この場にはびこる0と1は防御の力とした方がいい。

だとしたら、僕ができるのは、修正プログラムを手で作り出すことだけ。

多くのプログラムを1つの輪のように、効率的につなげられるものを作るだけ。


僕は憤然とぴょんぴょん跳ねると、キーボードが置かれた台に立ち、尻尾を揺らした。


「そ、その言い方…本当にあのリスか!?」

「ふん、口だけ達者なリスには変わらない。リスになにができる」


カチン。


「リスリスって……僕を、甘く見るな!!」


カタ……。


僕の手がキーボードのキーを押す。

手が小さい分キーを強く押して、さらに全身を素早く動かさないといけないけれど。

「白く稲妻」の名にかけて、意地でもやってやる。


両手両足、時には尻尾も使って。

くるくる、宙で回りながら僕はキーを叩く。


カタカタカタカタカタカタ、

カタカタカタカタカタカタ、

カタカタカタカタカタカタ。


決して、キーボードの上で、踊り狂って遊んでいるわけではない。

ちゃんとキーを打っている。


「うわ、なんだこのキーさばき。見えない…。リ、リスじゃないぞ、これ。やっぱり白き稲妻だぞ!!?」

「なにを言っているんだ、私の息子はリスじゃない!!」


カタ……。


僕は、父を見上げて、鼻で笑う。


「そんな時ばかり、息子扱い?」

「え……?」

「ふんっっ!!!」


カタカタカタカタカタカタ、

カタカタカタカタカタカタ、

カタカタカタカタカタカタ。


更にスピードアップ!!


ああ、なんだか…朱貴との特訓を思い出す。

あの時も絶えず僕は、体を動かし続けた。

あれでさえこなしたんだ、たかがキーボードを叩いてプログラムを作ることくらいなんだというのさ。


たくさん体使うけれど、全然苦にもならない。

多分特訓の成果だ。

くるくる回ったり、ぴょんぴょん飛び跳ねると、すごく気分がよくて、野生に還った気が――僕はあくまで人間だけど!! 別にリスとしての感想ではないんだけれど!!


人間とかリスとか以前に、僕は僕なんだ。


やはり腹が立つな。

三沢さんでも、すぐに僕だとわかったというのに。

どこで生きていようと、やっぱり僕は父が嫌いだ。


ネエ、ボクハココニイルンダヨ?


「よし、出来た。簡易的にだけど、全然違うはずだ」


ぜえぜえと息をしながら、僕は三沢さんにプログラム結合場所を指示する。

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