シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
この人がプログラムを組むなんて初めて知ったけれど、僕の方が年季が入っている。
たとえ現実逃避のひとり遊びから始まったといえども、幼少の頃からの親に対する鬱屈とした想いが、僕を支える今のスキルになったんだ。
だからその技術は普通以上のはずだ。
どうだ!!
少しばかり鼻をひくつかせて、どや顔をしてみせる。
依然鳴り響く鐘の音も無反応だったが、やがてゆっくりと、冷ややかな……僕に似た鳶色の瞳が僕に向けられる。
昔と同じく、そこには感動も賞賛もなにもなく。
「偉そうに。リスの分際で」
カチン。
三沢さんとの会話を聞いていたのかいなかったのかわからないけれど。
鐘の音にかき消されていたかもしれないけれど。
いまだ僕はリスらしい。
どこまでもリスにしたいらしい。
……紫堂玲という人間を、認めたくないのか。
「偉そうに言っているが、ご褒美に胡桃でも欲しいのか。ああ、確か……求愛の胡桃とか言っていたな。愛情を自分でカリカリ削って、なにが求愛だ。笑わせるな」
カッチーン。
「求愛の胡桃!? なんだよ、そのおかしげな名称のものは!! なんで僕がそんなものをカリカリしないといけないんだよ!! リスを馬鹿にするな!! リスにだってプライドはあるんだ!!」
「あれ……白き稲妻……なんか、リスを主張していないか? リス化してる?」
ぼそりとつぶやかれた言葉は聞き流す。
「プライドあるリスが、あんなに腹袋膨らませたり、ドジョウすくいなど踊るものか」
「そんなリスなんているわけないだろう!! リスを見損なうな!!」
「………。リスだからと言えば、過去をなかったものにして、なんでも許されると思っていないか? 客観的な判断もできないのか、リスという低俗なものは。幾ら人の言葉を話して奥義を使えるとはいえ、あの『暁の狂犬』以下のアホさ加減を披露したのを忘れたのか」
カッッチーーーン。
「リスに恨みでもあるのか!? リスが低俗なものか!! 煌のような駄犬と一緒にするな!!」
「まあまあ、落ち着けって。白き稲妻……狂犬が聞いたら嘆くぞ」
三沢さんの仲裁にも、僕は止まらない。
いつまでたっても僕という存在は、全否定される。
わかっていたはずなのに、それがどうしても悔しくてたまらない。
昔なら笑って誤魔化していたことが、今はできない。
リスの体だから?
それが動物の本能だから?
心が膨張するんだ。
僕を見ろって。