シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「では、あのオレンジよりは高尚だと? お前、自分が書いた答案を見てみろ。玲央、確かお前笑い転げて何枚か写真を撮っていたよな」


答案……?


「俺の動きまで監視していたのか? 抜け目ないなぁ……」


苦笑しながら、三沢さんがズボンから取り出したのは、見覚えあるiPhone。

ひっくり返せば、やはり胡散臭いシルクハットマーク。

裏世界の三沢さんまで行き渡っていたらしい……どうみても怪しげなもの。


この機械に関わって、いい思いはした覚えはない。


「ええと……情報屋は今?」


経験上、そんなものに保存してあるものが、僕にとって快いものだとは思えない僕は、今更ながら姿を見せない情報屋の所在を聞いて、話題をそらそうと試みる。


「このマークの主は、皆が止めても重傷悪化させて力を使い続けるから、この世界の責任者が言うこと聞けと"叱咤"し、隣の部屋で寝てる。一応は俺達、奴の力にかなり助けられていたんだが、あのばあさん、奴の股間を容赦なく蹴り飛ばしたんだ。傷を攻撃されると思っていたらしい奴は、その予想外の実力行使に必要以上にダメージを食らい、おかしな体勢で動かなくなった」


その場面を思い出しているのか、三沢さんも父も……その顔が痛そうに歪む。


「即座対応できないほど弱っていたのなら、さっさとひっこめばよかったのに、気高き獅子がここから出た後も、恰好つけすぎたからこうなる。ここだけの話、奴はずっと口説いていた、iPhoneガイド役の女が気高き獅子をベタ褒めしているのが悔しかったらしく、自分の勇姿を動画か音声発信して対抗しようとしていたらしい。だから俺が、後で奴の悶絶写真を送っておこうと思う。がははははは」


確か情報屋は緑皇で……、iPhoneガイド役って…百合恵さん……?

三沢さんに事も無げに言われたものに、なにをどうつっこんでいいかよくわからなかったが、とりあえず情報屋は生きて居るらしい。


「とりあえず、これだ。ほれ」


呆けている僕に、問答無用に突きつけられたその機械。

見ないわけにはいかないらしい。


「これは……」


そこで僕に見せられたものは、このリスが大きな鉛筆を抱えるようにして、山積みになった紙に、一生懸命なにかを書いているらしい写真と、なにが書かれていたのか……紙面のアップ、数点。


見えてくる。

試験問題らしきものに、リスが書いた解答が。
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