シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
三沢さんが指で、画面の写真画像をさらに拡大してくれた。
さらにくっきりはっきり見えてくる。
問題と解答の文字。
ほら、このリスはちゃんと漢字も使って文字が書ける……いや、そんな問題じゃない。
………。
「どうだ? 高尚なリスか?」
………。
「がははははは!! やっぱり何度見てもウケる!! あのクールな気高き獅子も笑い転げてたぞ? 見ろよ、この解答。すごい、真剣に書いてこうだぞ? ちなみに、これが狂犬の珍解答。これが皇城の次男坊の珍回答。甲乙つけがたいが……リスの方が一枚上手だろう?」
………。
三沢さんや櫂のように、笑う転げるというよりも――。
僕は居たたまれなくなり、思わず三沢さんの首に抱きついた。
馬鹿だ……。
犬や猿だけではなく――
このリス、ここまで馬鹿だったのか……。
僕を召喚した……"高尚なリス"像が、ガラガラと音をたてて壊れていく。
これが僕には持ち得ない、煌の言う…"インパクト"の一部なのか。
それを超えねば、櫂や煌を驚かすことはできないのか。
表世界での、僕の特訓の成果は……一体……。
そんな時、ピッという短い機械音がした。
プログラムがリセット再生されたようだ。
誰もの顔が強ばり、これからを備えて気を引き締める。
分にも満たない、僅かな休憩も終了だ。
僕のプログラムがどこまで有効なのか、ここからが勝負。
全員の視線が、いくつもの画面に注がれる。
変化はある。
先ほど以上に、画面に流れる英数字や0と1の文字列の速度が早い。
「よし!!」
僕は思わずガッツポーズをして喜んだ。
ここの機械が処理するプログラムの全てを、僕は解析しているわけではない。
あくまで、三沢さん達がしようとしていたことを、補佐しただけの話。
なにかからダメージを受けている部分を、補強する防御プログラムを早く作動させただけ。
それが具体的にどんなものから攻撃を受けているのか、どの部分が現在どう被害にあっているのか、そこまで読み取るには、俯瞰図とも言うべき全体像を知らねばならない。
僕の言葉に三沢さんが頷き……切り替えたのは、塔のセンサーが感知する、"異常"検知画面。
異常数値を検知すれば、それは裏世界全体に及ぶまで、3Dでモニタリングしてくれるものらしい。
現在、深刻な攻撃は、地面の下から突き上げるような"爆裂"らしい。
その振動の全体的な分布図から見れば、どうも塔周辺が狙われているようだ。
塔が崩れれば、裏世界の"防衛"機能はなくなり、破壊が始まるという。
裏世界で要となる、このガラスの塔。
僕は塔を把握したいからと、モニタリングを始め、塔の全体像を見せて貰った。