シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「おぅ、白き稲妻のおかげで、防御(シールド)はいい感じに進んでいるぞ。見てみろ、耐震度や抗圧力度が飛躍的にあがった。処理速度が早まったおかげだな。スクリーンの防御にかなり無理し続けてかなり電力使ったから、回復の方に十分に手を回せなかった分、本当に助かった。なんとか爆破も食い止められているし。早く爆破の原因を取り除きたいが、とりあえず今は、防御態勢を立て直すいいチャンスだ」


横では、様々な数値を見ながら、三沢さんが弾んだ声を出している。

ついでにちらりと目に入った僕の父は、押し黙ったまま僕達とは別の方向にて……、監視カメラと思われる映像をひとつのモニターで見ていた。


モノクロだが、蝶と戦う翠と吉祥が映っている。

そして、突如翠が、僕達の部屋とは別の方向に走り出した。


「おいおい、皇城の次男はなにをしていたんだ? どこに走った?」


三沢さんとは対照的に、父は興味なさそうな顔で、その画面を別の画面に切り替えた。


見えないのか。

彼らは、カメラにも映る黄色い蝶を。


翠はどうしたんだろう。

鐘の音が止んだから、睦月を探しに行ったのだろうか。


捜索は翠に任せようと、僕は別のことを質問した。


「三沢さん、この塔のガラスは、電気を通さない…絶縁体の効果はあるの?」

「ああ、だから虚数の影響は受けない。特殊加工だから、耐久性もある。表世界の、あのもろいガラスと同じではないぞ」

「……。ねえ、外は、周涅の術のせいか虚数が蔓延しているのは確かだ。だけど、この塔の内部には、常に純粋な0と1が充満している。それはなぜ?」


僕は、塔に対する情報を目にしても、どうしてもその疑問を解けなかった。


「お前さんの親父さんが一枚噛んでいるという推測はしてないのか?」

「電脳世界の力を、父も使えると? 生憎そこまでの力はないだろうね」


僕は、父を見た。


ここまで譲歩して息子として語る僕を、あくまでただのへんてこリスだと言いのけるのなら、僕の言葉は、大嫌いな息子を騙る気にくわないリスの戯言だろう。


「もしも電脳世界の多大な力を利用でき、自由に0と1を使え増殖もできるなら。裏世界の滅亡がかかっている時に、全抵抗力を機械やプログラムには頼らないだろう」


戯言でもいい。

なんだっていい。


「電脳世界に対抗するのに、電脳世界から与えられている力で、更には人間が作るもので応じるなんて愚行すぎる。あえてそんな手段をとるのは、電脳世界を、その力を知らないからだ」

「だが、お前だってプログラムは作るんだろう!?」


父が僕にかみつく。
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