シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
まず、思いつくのは地下にあるという魔方陣。
櫂もそれを心配していたけれど、僕がモニタリング見る限りにおいて、確かに地下に対して、防御的措置はとられているようだ。
重要度はあるのだろう。
だがどうしても僕には腑に落ちない。
この世界を破壊しようとしていた周涅にとって、もしかしてこの世界全員の命を奪うことにもなりかねない魔方陣を、真っ先に……今のように重点的に狙わなかったのはなぜか。
裏世界の要である塔を破壊する気なら、どうして塔から引き離すような、9つの石碑を用いた迷路状にしたり、吉祥を操ったりと、わざわざ時間と手間のかかる方法をとったのか。
周涅に嗜虐癖はあるけれど、表世界では僕達も居たんだし、そこまでゆっくり遊んでいる余裕があった状況には思えないんだ。
それに魔方陣が、父がこの世界に居る理由とするには弱すぎる。
仮に父が死んでいたとして、父を生かせる魔方陣は、裏世界以外にもあるだろうから。
ならば父はなんのためにここに居る?
そんな時、バタバタと音がして、翠が駆け込んできた。
「やばやばだよ!! 塔の他の場所も亀裂が見えてきた!! 今吉祥ちゃんだけではなく、いろんな式神出して対応しているけど、なんとかしないとやばいよ。睦月はどこにいるかわからないし、塔の外とかに皆が逃げている姿は見えないんだ。どこにいるんだろう」
すると三沢さんが奥の部屋に走って行き、すぐ戻ってくる。
「ばあさ……夢路さんがいないということは、きっと例のあの"安全な場所"に先導していたのかもしれない。俺達は機械に夢中になりすぎて、彼女が移動した気配に気づかなかった。向こうの部屋は、階下に降りる別ルートがあるからな」
夢路というのは、睦月が言っていた"おばあちゃん"なんだろう。
情報屋を一発KOした、ワイルドな女性……。
「え、だったら情報屋は?」
「置いてけぼり。がははははは」
不憫だ、緑皇なんだろう、あいつ……。