シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「どちらにしろ、皇城の次男坊がいう"やばやば"が機械で感知できないのがやばやばだ。まさか塔の内部から瓦解するなんて……」


悔しそうに三沢さんが舌打ちすれば、僕の父がカタカタキーボードを叩いた。


「機械に……電気系統に、物理的外傷が見えているようだな。原因は一体なんだ」


カタカタ、カタカタ、


「きっと黄色い蝶だよ!!」


翠の返事に、父は手を止めて眉間に皺を寄せた。


「おいおい、マジかい。この裏世界の、しかも塔の内部に出てきたと?」


三沢さんまで険しい顔だった。


「電脳世界からの虚数に導かれたか!? なんとかしなければ……!!!」


父も三沢さんも、その顔には焦躁の色が見える。

塔に隠している"なにか"に関係するのだろうか。


「この塔の内部を赤外線でもスキャンできないの? できれば0と1が流出しているところに赤、今いる僕達は黒、それ以外の感知に青で」


三沢さんに操作して貰って映し出されたのは、赤と青に乱れた塔の上部だった。


「ここが現在地だよね。そうそう、このフロアに関して言えば、この色着いた所に亀裂があるんだ。うわ、見事に赤と青が混ざっているね」


画面は、フロアから塔全体に切り替えられた。

僕は静かに言う。


「黄色い蝶が、0と1の力を利用している機械構造を破壊しているようだ」



赤と青。二色のカタマリは、塔の至る所に無数にあった。

そしてそれは移動している。


地下ではない。

最上階であるこの階へと。


それは僕達を狙っているのか。


それとも――

"なにか"を狙っているのか。

それは、僕達いるこの最上階にあるというのか。


そうした蝶による危険だけではない。

直面する問題は、まだ他にも出てくる。


「空間の亀裂から黄色い蝶がこちら側になだれ込み、そしてその亀裂から、こちらで壊された機械から漏れるの0と1の力が流出しているんだ。このままでは、0と1の力が少なくなり、このプログラムの防御システムは意味をなさなくなる」

僕の声に、誰もが息をのむ。


「そこに、爆破だけではなく……電脳世界からのなんらかの反撃があれば……」


完全無防備な塔には、存在の意味があるのか。


翠が強ばった顔で僕を見た。


「もしも、今の状況に救いがあるのだとすれば、蝶が目を抉る女性はいないということ……」


「失礼な猿め!! 酸化させてやろうか!!」

「ひぃっ!!?」


ゆさゆさと胸を揺らして、睦月が入ってきた。

背中には情報屋を背負って。




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