シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「――で、玲くんはなにを見ているのかな。モニタの映像ぶれぶれで……」
本来すべき話題に戻し、全員で眉間に皺を寄せながら目を細め、玲くんが見ているモニタを見てみたが、よくわからない。
塔の内部らしきものを映している気はするんだけれど、壊れたテレビのように映像が乱れ、色もセピアとモノクロの中間のように色彩を失い、見づらいったらありゃしない。
多分リスだからあれが理解できる…というわけでもなさそうで、玲くんは僅かに肩を竦めたような動きを見せると、カタカタキーボードで遊び……いや、キーボードで指示を始めた。
「おや……?」
今、色を映さないモニタに……オレンジ色が横切ったような?
それはあたしの気のせいではなかったらしい。
「あのオレンジ色。もしかしてあれは煌か?」
まず紫茉ちゃんが口を開いた。
「あのふざけた蜜柑色。あれは駄犬しかいませんね」
桜ちゃんが不愉快そうに顔をしかめる。
「如月の頭の色は凄いな。セピアでぶれぶれの酷い画面でも、鮮やかなオレンジ色だと感じてしまえるこの不思議。さすがワンコだね」
「由香ちゃん、ワンコは関係あるのかな? ああ、櫂もいるね。あの黒いの」
「玲様の操作で、映像が安定してきましたね。間違いなく、櫂様と煌。クオンもいますね。ふたりを先導して、ん、煌が持ち上げた……?」
てっきり、人の手で運ばれることにくせになったハゲネコ様が、自らの足で歩くのに疲れ果て、煌に運ばせようとしたのだと思ったけれど、映像を見ている限り、ハゲネコ様は宙の一点で静止したかったらしい。
煌ももっと可愛く綺麗に美ネコを持ち上げればいいものを、面倒くさそうにハゲネコ様の腰のあたりを両手で支えるだけで、でろんと伸びた胴がやけにだらだら感を増幅しているような……。
そして煌はそのままハゲネコ様を、目の前の扉のような行き止まりの横に突き出せば、ハゲネコ様は静かにふさふさの手を上げ、なにかおかしな動きを始めた。
すると、出てきたのはタッチパネルのような青く輝く小さな機械盤。
「待て待て、あれは"約束の地(カナン)"の魔法じゃないか!」
鼻息荒く、由香ちゃんがそれを見つめる。
「まぁ久遠なら、出来るんだろうけど……あんな光も、なにもない空間からなにも出せないボクとしては、ニャンコ以下の存在と言われているようで悔しいなあっ」
ハゲネコ様は進化し続ける。
空間に出た電子盤を、まるでタッチパネルのようにぽちぽち押した。
ためらうことのない、ふさふさのニャンコ手で。
電子盤がなければ、怪しい宗教に祈りを捧げる怪異な祭祀のようでもある。