シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「すごい、ハゲネコ様……魔法だけではなく、機械も弄れるの!?」


あたし達は興奮の坩堝。

ここに玲くんがいたら、彼もきっと興奮していただろう。

あの力強く動くニャンコ手は、気まぐれな遊びのようなものには思えなかった。

きちんと理解して、あるべきように動いている。


扉が開く方法を、ハゲネコ様は知っている。

ハゲネコ様、すごい。

あっちの世界でも、色々とすごい!!



しかし――。


「……おや?」


その扉は開かない。

てっきりハゲネコ様が扉を開けるのだと思っていたけれど、扉は動く気配もなく。

ハゲネコ様は何度か、パネルを押す動作を繰り返す。

きっと一度では開かない複雑な扉なのだと、息を飲むあたし。


だけど――。


「……あれ?」


彼らの前にある扉らしきものは、依然開かない。


ハゲネコ様を抱えた煌が、そのまま仰け反るようにして大爆笑始めれば、ハゲネコ様は後ろ向きのまま、尻尾でばしばしと奴の顔を叩いた。

凄まじい速度の連打。

相当お怒りのようだ。


「師匠もそうだけど、あのハゲネコ様の尻尾も流れるように自然な動きをするよな。ただのニャンコとは思えない」

「久遠も玲くん同様天才肌らしいから、きっと順応しているんだね……」


しかし久遠はあんなに凶暴だったろうか。

まあ、やる気がないくせに、おとなしい印象はまるでない。


ハゲネコ様の動きは、どちらかと言えば緋狭姉のような気もするけれど……。


「おっ、師匠がなにかキーボード叩いて……あぁ、電気を止めてたのか。ハゲネコ様見て見ろよ。どや顔で如月を見て、尻尾をぴんとたててすまして先頭歩いたぞ?」

「どこにいくんでしょうね……」


『さあ、櫂達も合流した。ぼやぼやせず地下に移動するよ。ここは危ない』


玲くん同様にモニタで櫂達を見守っていた睦月の言葉から、扉の奥に消えた櫂と煌とハゲネコ様は地下に行ったらしい。


睦月が情報屋を背負いながら、下を促せば――


『僕はここに残る』


玲くんは毅然とした声を放った。


『紫堂玲……今は吉祥ちゃん達式神が頑張ってくれているけれど、あちこち亀裂入ってここに蝶がなだれ込むのも、正直時間の問題。危なくなる前に、安全だと言う所に行こうよ。皆もいるし。今は緊急事態だ、合流した方が……』

『櫂と煌が地下にいるのなら、僕はここで僕のやるべきことをする』


小猿くんが窘(たしな)めたが、それでも小リスは小さな頭を横に振る。
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