シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
『おっさん……』
小猿くんの言葉に、クマが項垂れた。
『紫堂玲がワンコ達の活躍を信じるというのなら、俺だって信じる。俺だって一緒にこの世界で頑張ってきたんだ。俺より、向こうの方が凄いのもわかっているし。それにさ、地下に行ったところで、ふたりに怒鳴られるよ。"早く玲のところに戻れ"って。そういう奴らじゃないか』
『……いいのか?』
『俺も混ぜてよ。ひとりで抱え込むなって。あははは、俺……結構紫堂玲とワンコに影響されてきたのかも。だからおっさん'S達はさっさと……』
『誰が地下に行くか』
そう固い声で言ったのは、玲くんのお父さん。
『今までここを守り続けていたのは私だ。新参リスの浅知恵に任せられるか』
玲くん、酷い言われようだけれど、彼は特別に嫌悪の対応をするわけではなく、小猿くんの肩の上で、鼻をひくひくさせて少しばかり挑発的に言った。
『だったら、浅知恵の新参リスに笑われないような、お手並み拝見』
あたしは思う。
玲くんは最初から、お父さんの助力を求めていたのではと。
玲くんだって、リスの体ですべてをひとりでこなすには、限界がある。
それを素直に言えないところに、わだかまりがある。
"一緒に力を合わせて頑張ろう"
そう言えるだけの気軽さすらない、実の親子。
『うし、俺だってやるぞ。白き稲妻の手は小さいし、いないよりはましだろ、がはははは』
『ありがとう、三沢さん』
他人には笑顔で、親しみこめてその肩に飛び乗れるのに、実の親にはそれをしない玲くん。
お父さんはどう思っているのだろう。
他人以下の関係になりはてた息子に、愛情のひとかけらくらい、見せてはくれないのだろうか。
しかし彼は――冷ややかなままだった。