シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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――本当に、あんたらって同じ人種だね。ま、嫌いじゃないよ、そういうの。

睦月はそう笑いながら、情報屋を背負って地下に降りた。


ねぇ、情報屋サン。五皇ならさ、もっと活躍しようよ……。

あたしが情報屋に念じた祈りは、届かなかったようだ。

彼は本当に五皇という大それたものなんだろうか。

やっぱりただのアホにしか見えない。

大の男が、女忍者に背負われて避難場所に連れられるって、……どうよ?



クマの肩の上にいる小リスの司令官は、自らの作戦プランを披露する。

やはり仁王立ち姿のリスは勇ましく、なんだか軍のお偉いさんのようだ。


『今、抱えている問題はみっつ。ひとつは電脳世界からの攻撃による虚数増加。ふたつは虚数も無関係とは思えない、黄色い蝶があちこち発生していること。そして最後は、塔の防御力となる、塔内部の0と1の純度が低下し、虚数が上がっているということ』

『虚数、だからかな。俺……ずっと耳がきんきんしているんだ』


少し顔を顰めた小猿くんの言葉に、クマの首に片手をつけて玲くんは頷いた。


『硝子の壁を挟んで内外、虚数にまみれれば……絶縁体である硝子の意義はなくなり、どんなプログラムを走らせても、電気量という圧に応じた、ただの物理的問題として、硝子は……塔自体は、壊れるだろう。そしてそれは、地下の魔方陣にも影響が出る。虚数が祟れば"約束の地(カナン)"の二の舞、魔方陣の爆破にも繋ってくると思う』


ぱさりぱさりと尻尾が大きく揺らし、玲くんの声は続く。


『黄色い蝶の影響か、塔の中の虚数化の速度は速まっている。大至急0と1を増産して、電気の均衡を立て直さねばならない。正直今の僕の体は、どこまでの力の放出に耐えられるか自分でもよくわからない。だから蝶を弾きながら0と1を増産する方法を同時にとることでの、"副作用"が推し量れない』

『ちょっと待て、白き稲妻。お前さん、0と1を増産もできるのか?』

『ああ。出来るようになったよ。少しだけどね。本当なら虚数を0と1に再変換させたいところだけど、そこまでは出来ないみたいだ。残念ながら』

何でもないように玲くんは言うけれど、あんぐりの口を開けたまま固まったクマの様子から、増産するということが簡単にできるものではないことはわかる。

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